名もなき遺跡#01
遺跡といっても想像をしているような外観はしておらず、切り崩した壁に穴を開けたような遺跡だ。
しばらく人の手が加わった様子はなく、遺跡の内部は明かりもない。
誰が何のために作ったのかすらもわからない、遺跡内部は冷えた空気が充満している。
たまに吹く風に松明の火を揺らしながら、ライカの魔力探知を頼りに足を進める。
「この先だね」
一つの壁の前で足を止めるライカはノックするように壁を叩く。
どう見てもその先に道はない。
「壁だな」
「そうなんだけど、この先に間違いなく部屋があるよ」
「壁を壊すかい?」
「壊して遺跡が崩れるってことはねぇよな?」
軽く叩くと天井からパラパラと、小さな石が崩れてくる。
その様子を見て全員が黙る。
「でもどうするの? この先に目的の物があるかもしれないよ」
「他に道はなさそうだが…」
「ん? なんだこれ?」
「何か見つけたのか?」
隼人が松明で足元を照らすと、明らかに不自然な傷が地面に付いていた。
それは何か大きなものが引きずられたような感じだ。
「ここの傷だけ進行方向に対して横に出来ている。ということは…」
松明で照らしながら壁を触って何かを確かめる隼人を、二人は静かに見届ける。
元の位置から三メートルずれた辺りで隼人は二人を呼ぶと、そこにある繋ぎ目を見せる。




