新しい風#02
三日目、四日目と時間が過ぎたが稽古には一切ライカは顔を出さず、どうやら毎日アンジェリークの話し相手になっているようだ。
女子同士の話に首を突っ込むつもりも、仲間に入るつもりもないが、それで毎日お腹いっぱいに肉を食べるライカをみて、腑に落ちない気持ちを稽古で発散していた。
五日目になると国王の体調も良くなり、今回の件を含めた話をすることになった。
初めてこの城を訪れた際に通された食堂で、食事をしながらの話し合いが行われる。
参加者は隼人とライカ、国王にアンジェリーク、そしてカイオルだ。
話し合いが始まると開口一番に国王からは礼を述べられた。
「まずは今回の件で礼を言いたいのだが、困ったことにどれだけ感謝の言葉を並べても感謝を伝え切れる自身がないのだ。そしてお主たちを疑ってしまったことを許して欲しい」
そう言うと頭を下げる国王。
「顔を上げてくれ。突然魔王と名乗った相手をすぐに信用してくれってのが無理な話だから、それは気にする必要はないし、助けたのだって当たり前のことをしたにすぎない。それに俺一人で解決したわけじゃない。それとも国王の頭ってのはそんなに簡単に下げいいぐらい安いものなのか?」
「それにお礼ってのは言葉じゃないだよ?」
「形ある物を渡すほうが、こちらとしてはありがたいぐらいじゃ」
国王は顔を上げると、隼人が申し出ていた魔王国との友好関係の話を切り出す。
「都合がいいと言われれば返す言葉も見つからぬが、モンス王国は魔王国との友好関係を結びたいと思っておる。それに関わる交易船やその他諸々の手配などはこちらが全て請け負うつもりじゃ」
「それは助かる」
「ただそれにおいて厳密な取り決めをしなければならないことは理解して欲しいのじゃ。突然、魔物たちの国と友好結び交易を行うと民が知れば大混乱も起きよう」
「こちらも一方的な話で進めるつもりはないから、まずはそちらが提示する内容をまとめて欲しい。それを元に双方が納得できる部分で取り決めをしたいと考えている」
「そうしてもらえると助かる。それでは後日、まとめた物を渡すので少し時間をもらうがよいか?」
「あぁ、構わない」
「さて、もう一つじゃな」
国王の視線がカイオルに向けられる。




