鬼を背負う少年#04
『ダメ! 戻って!』
『かっかっかっ! 約束だ! お礼に全てを片付けてきてやる!』
その言葉をあとに一切の気配がなくなる。
胸騒ぎを覚えた少年は急いで村へ引き返す。
時間にして十数分ほどだが、たどり着いた頃には村は燃え、至るところに人が倒れており、その全てが事切れている。
少年の家にはまだ火の手は回っておらず、急いで中を確認するが両親は既に事切れていた。
ただそれは賊とは違う何かに襲われたような、異様さを感じ取ることができた。
『父さん… 母さん…』
悲しむ時間も束の間で背後に気配を感じ取り咄嗟に振り返ると、そこには先程までは姿を見ることもできなかった異形の姿があった。
表情を読み取ることはできないものの、それは不気味な笑みを浮かべていた。
『願い通り、全てを片付けてやったぞ』
『すべ…て?』
様々な想像が脳裏を駆け巡る中、一番にたどり着いた答えは目の前に倒れている両親についてだった。
しかし、それは思い違いでどうしようもない故の結果だったと思いたい。
そんな少年の考えを見透かしたかのように異形は言葉を続ける。
『あぁ全てだ。出してくれた礼として、この村全てを片付けてやったぞ!』
外で倒れている賊も、目の前で事切れてしまっている両親も全てはこの異形が行ったこと。
『なんで…?』
『あぁ、そうか。まだ、全てじゃないな?』
暗闇の中に光る刃が少年へ向けられる。
少しでも身を動かけば、その刃が喉を切り裂くような冷たい空気が漂い、呼吸ができなくなる。




