ライカと謎の青年
再び場所が代わり、街はずれの川が流れる畔。
街の子供たちが水遊びをしている。
それを座って眺めるライカの姿がそこにある。
「どうしたらいいかな…」
ライカとしてもサラマンダに会うために騒動を起こしたいわけではない。
「簡単に偵察をしてみたけど、厳重に兵の配置もされてた。手薄になりやすい場所には丁寧な探知と拘束の複合魔法。高位な術者の存在がいるのは間違いない。空からって思ったけどあまりにも目立ちすぎるからなぁ~」
そのまま後ろに倒れ両手を広げ空を見上げ、ため息を一つつく。
「どうしたのお嬢ちゃん。溜息なんてついて」
「なんだあんた?」
ライカの顔を除くように、突然一人の青年が声を掛ける。
金髪碧眼でいわゆる整った顔立ちをしている。
「おっと、突然ごめんね。僕の名前はカイオル。楽しくなさそうなお嬢ちゃんの姿が見えてね。どうしたんだろう? と思ってさ」
「それで話しかけたの? なに? そういう趣味の人?」
「あはは。そんな趣味はないよ。お嬢ちゃんはみんなと遊ばないの?」
カイオルは水遊びをしている子供たちに目を配りながらそういう。
「別に遊びたくてここに居るんじゃないよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「考え事?」
カイオルが少し距離を空けて座る。
ライカは寝そべったままである。
「もしよかったら、お嬢ちゃんの…」
「そのお嬢ちゃんって呼び方やめて。なんかむかつく」
「おっと、それはすまない」
少しの沈黙が流れる。
「僕も考え事をするときはここに来るんだ。今日もここに来た理由は少し考えたいことがあってね。そうしたらお嬢…、君の姿が見えたんだ」
「……。」
「僕がしている仕事は、この国にとってとても重要でね。ありがたいことに、その仕事で今度大役を任されることになった」
カイオルの話を黙って聞くライカ。
「最初はすごい嬉しくてね。やっとここまできた! って思ったんだけど、今になって怖くなっている自分がいる。自分にこの役を担える力があるのか、他に適任がいるんじゃないかってね」
「あのさ、聞いてもいない話を語られても困るんだけど。私の考えもまとまらないし」
ライカは体を起こし立ち上がる。
「すまない」
「あのさ、任されたなら自信を持ってやりなよ。例え失敗しても次に活かせばいいでしょ。もっと肩の力抜きなよ」
そう言い残しライカは歩き出し、その場を離れる。
「君の名前は?」
カイオルがライカの背中に呼びかける。
「…なに? やっぱりそういう趣味の人だったの? また今度、会うことがあれば教えるよ」
「行ってしまったか…」
ライカの姿は遠く見えなくなってしまった。
「カイオルさーん!」
別の男がカイオルの名を呼びながら駆け寄ってくる。
「探しましたよ。一体ここで何を?」
「少しね。」
「勝手な行動はしないでくださいよ。自分の立場を考えてください。カイオル騎士長」
「気を付けるよ。苦労をかけたね」
「さぁ、城へ戻りますよ。これからサラマンダの討伐作戦会議です」
カイオルはその場を後にした。




