鬼を背負う少年#01
ゆっくり腰を上げてその場を去ろうとする隼人にカイオルが声をかける。
「ハヤト。今回は本当に助かった、礼をいう。そして過去に刃を向けたことすまなく思っている」
その言葉を聞きながら溜息をつき言葉を返す。
「やめろやめろ、気持ち悪い。ほら見ろ。鳥肌が立ったじゃねぇか。本来お前と俺は敵対していても何ら不思議じゃない。その相手に刃を向けるのは普通だと思うし、俺ならあの時逆の立場なら即刻切り伏せてるぞ。だから余計なことは言わずに、さっさと怪我を治せ」
そう言い捨てるとライカと一緒に扉を出て行く。
部屋にはカイオルとアンベールの二人だけが残り、先ほどとは異なり部屋は静まり返る。
「それでは俺も失礼します。ごゆっくり休まれてください」
立ち上がり一礼をした後に、立ち去ろうとするアンベールの背中に声をかける。
「アンベール、心配をかけた」
「いえ、そんなことは…」
振り返ることなく答える背中に言葉を続ける。
「姫様から話は聞いている。お前はどう感じて、どう思った?」
少しの沈黙の後、アンベールは質問に答える。
「…ひどく、自分の力不足を感じました。貴方がいなくなり、国も良くない方向へ進む中、どうにもできない自分に苛立ちを覚えました」
その場で振り返り、まっすくカイオルを見据えて心に決めていた言葉を紡ぐ。
「カイオルさん、俺は…」
「騎士を辞めるって言いたんだろう?」
「っ!」
「別に止めたりはしない。それがお前の選んだ道なのであれば、止める権利もない。一緒に歩んだ仲
間として快く送り出すだけだ。だが、それが自責の念から出た言葉だとしたら、私はお前を送り出すことはできない」
「……」
「…少し話をしようか」
アンベールを椅子へ誘導すると、カイオルは語り始める。
それは北の国ヘイルの西部にある、小さな村に住んでいた少年の話だった。




