アンジェリークの愉時#02
アンジェリークが食いつくように、城内での宿泊を提案する。
恩人だから手厚く持て成したいという思いが強く感じられるが、流石にそこまでの施しを受けるつもりもない隼人とライカは、それを丁寧に断る。
しかし、その程度で引くほどアンジェリークは甘くなく、それならばと別の提案を行う。
「騎士たちに稽古をつけてください。その代わりにこの城を宿としてお貸しします。もちろん、美味しいご飯もついてきます!」
「なんだって俺たちが騎士の稽古をしないといけないんだ」
呆れたように言葉を返す隼人に対して、アンジェリークの提案を推す人物が一人現れる。
「それはいい話だ。今の騎士たちには実践を含めた経験が足りない。ハヤトが稽古をつけてくれるなら心強い」
「なんでお前はいきなり俺を持ち上げるんだよ。そのもう片方の腕も折ってやろうか?」
「カイオルもそう思うでしょう!? それに稽古が終われば、精がつくようにお肉も沢山準備しますよ!」
「いや、俺はそんなに肉は…」
言葉を遮るように隼人の肩に手を置き、振り向く隼人に笑顔を向けるライカがいた。
その表情を見て何かを察するのだった。
「そこまでお願いされたらしかたないねハヤト。これはもう受けるしかないよね」
「とりえずその涎を拭きなさい。…はぁ、わかったよ」
「決まりですね! それでは明日からお願いします! お部屋はお貸ししている場所を使ってくださいませ。うふふ、やったー! それでは私は先に失礼しますね」
楽しげに部屋を後にするアンジェリークだが、一体何が彼女をそこまで喜ばせているのだろうか。
その答えはカイオルの口から紡がれた。
「国王様繋がりの堅苦しい来客ばかりだから、近しい年齢の来客が嬉しいのだろうな。気を張る必要もないから楽しいのだろう。少なくともアンジェリーク様は、お前たちのことは友人として思っているはずだ」
「…友人の頼みなら仕方ないか」




