傷だらけの鬼#01
「お体は大丈夫なのですか!? お部屋を伺ったらいらっしゃらないので心配しました… どこか痛む場所はありませんか? 怪我は大丈夫なのですか? 体調に変化はありませんか? 受けられていた毒に関しては大丈夫だとライカ様が仰っていましたが、本当に大丈夫ですか? 気分は悪くないですか? よければお部屋までご一緒に…!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 落ち着いてくれ」
アンジェリークに落ち着いてもらうために逆に宥める形となったが、繰り返される質問はいつしか感謝の言葉へと変わっていた。
「本当に…! 本当に、ありがとうございます」
頭を下げ涙を流しながら、何度も何度も感謝の気持ちを伝える。
「私だけではなく、貴方たちのおかげで沢山の命が救われました… 本当に…!」
「顔をあげてくれアンジェ。泣かると悪いことをしている気分になってしまう。笑顔を見せてくれたほうが安心するんだが」
「それは、できません… 今、とてもひどい顔をしているので。それでも、そんな顔でも良いのであれば」
アンジェリークは俯いたまま雑に顔を拭ったあとに顔を上げ、隼人へ笑顔を向ける。
彼女から流れる涙を見れば本当に民を想い、国を想っていたことがわかる。
その表情はとても美しかった。
「あ、そういえば…」
他にも誰かいなかった?とカイオルのことを遠まわしに訪ねようと思ったタイミングで、言葉を遮るように会わせたい人がいると告げられる。
その表情は先ほどとは異なり、明るく浮ついている。
案内をされるがまま後ろをついて行くと一つの扉の前で立ち止まる。
「こちらです」
ノックを三回、声をかけて扉を開けて部屋に入ると、一番最初に目に入ったは椅子に腰掛けているアンベールの姿だった。
こちらに気付き立ち上がって一礼するが、それはきっとアンジェリークに向けられたもので隼人に対したものではない。
様子だけ見ればアーネルに受けた怪我も竜涙草の効果で万全のようだ。
ただ恐らく会わせたい人物はアンベールでないことは容易に理解できた。
アンベールの後ろ、ベッドの上で身体を休めている怪我だらけであろう男。




