強大な魔法陣#01
「ようやく逃げるのは終わりか?」
「逃げる? まだわからないのですか? あなたたちでは私には勝てないのですよ?」
気付けば街の中心に位置する広場まで移動をしていた。
辺りの被害を考えれば、この場所での戦いは避けたいところだ。
「それにこの場所に誘い込まれたと、疑うべきではないですか?」
確かにわざわざ広い場所へ移動するメリットはない。
戦う上では遮蔽物があったほうが、身も隠しやすく奇襲も掛けやすい。
であれば、この場所でしかできない何かがあると考えてもいい。
「さぁ、毒の雨に溺れなさい」
足元が光に包まれる。
「なんだこれ…!」
「これ広範囲で魔法陣に包まれてるよ!」
「えぇ、対象はこの街全体です」
「街全体って、まさか嘘だろ!?」
街全体を範囲として捉えた広域魔法。
本来これほどまでの広域魔法であれば、使用される魔法陣の重要拠点にて、術を安定させる為の術者が必要である。
それをたった一人で構築し、発動をさせている。
「これは以前から準備されていたものだよ」
「言ったじゃないですか。私には勝てませんって」
次第に上空から雫が落ち始める。
雨としては拙いが、徐々に全体を濡らしていくには十分だ。
「流石に即効性まで持たせることはできないですが、それでも十分でしょう。貴方たちにはこれを止める術もなければ、堪えうることもできません。この街自体も死へ向かうでしょう」
隼人は竜眼を利用して魔法陣を調べるが、魔法陣の核となる部分が見つからない。
「核が見当たらない時の対処は教えてもらってないぞ!」
ミストセルラルにて修行をしていた際に、魔法についてクィルに学んでいた。
『ハヤトは魔法についてどこまで知っておる?』
『魔法は自身の魔力を引き換えに、精霊から力を借りて発動させてるんだよな?』
『そのとおりじゃ。では、それ以外の魔法について分かることはあるか?』
『それ以外ってなんだ?』
『ふむ、では後学として覚えておくとよい』
クィルは近場にある手頃な枝を手に取り、地面に描きながら説明を始める。




