カイオルvs孤絶の大蛇ゲルドラ#03
「唯一の救いは、夜叉がいてくれることではあるが」
黒剣にはそれぞれに特殊な能力が備わっている。
共通として魔力を吸う力が備わっており、剣を持つ使用者の魔力はもちろん、斬られた物の魔力を吸収する。
そしてもう一つはそれぞれの黒剣に備わる固有能力だ。
隼人の持つ黒剣、妖狐剣:閻狐には吸収した魔力を放出することができ、その利用方法に制限はなく自身の強化にも利用できる。
そしてカイオルの持つ、残魔剣:月影は使役している相手を強化する力を持つ。
つまり、所持するカイオルの魔力が続く限り、夜叉を強化することができるのだ。
「長引かせるわけにはいかないな。夜叉が動きやすいように立ち回らなければ」
夜叉の能力によってお互いの位置を入れ替えるながら戦闘をおこなう。
カイオルがゲルドラの注意を引き、相手の攻撃に合わせ位置を入れ替えカウンターの一閃を見舞う。
しかしギリギリ切断には至らない。
「これでどうだ」
カイオルは背後から剣風に魔力を乗せ、傷ついている首へ向けて攻撃をおこなう。
その剣風は見事に首を捉え切断する。
「残り一つ」
切断できたことに安堵したカイオルだったが、そこに強烈な尻尾による打撃が襲う。
勢いよく吹き飛ばされ建物の壁を突き破る。
驚くことに首を切断されたのにも関わらず、ゲルドラは悶えることなくカイオルへ攻撃を仕掛けてきたのだ。
ゆっくりと壁に穴の開いた建物から姿を現すカイオルを向きながら、口を開け舌を上下に揺らしている。
「首を、捨てたか…」
頭から出血をしており、激しく身体を強打したことで、骨も折れており呼吸も荒い。
「(左上腕骨に肋が数本… 左腕は使い物にならないか)」
落ちている黒剣を拾い上げると、窺うように傍に夜叉が現れ、すぐに姿を消す。
間違えても攻撃を受けていい相手ではない。
だが反撃はないという傲りと慢心が、相手が身を捨てでも攻撃に転じる可能性を消していた。
「残り、一つ…」
正直に言えば長くはもたないだろう。
この状況に合わせて、黒剣使用による魔力搾取がされる中、長時間の戦闘は既に無理に近い。
「ふぅ…」
呼吸を整えながら痛みを抑える。
息をするのも、身体を動かすことも痛みを伴う。
そのまま倒れこんでしまうことが出来たら、どれだけ楽になれるだろうか。




