正体#02
そしてゲルドラへ斬撃を行ったのはカイオルが持つ鬼、夜叉。
その姿は以前よりも逞しくなっていた。
その場を任せて走り出した隼人へ向かって、ゲルドラは攻撃を仕掛ける。
だが斬撃によって止められる。
「お前の相手は私がしてやろう」
攻撃が癪に触ったようで、隼人を無視してカイオルに向き直すゲルドラ。
様子から見て憤怒しているようだ。
隼人はその脇を通りアーネルに迫るが、その場から走り去る。
「今更逃げようってのか」
隼人は追跡を始める。
その姿を見届けたカイオルは改めて2本の剣を構えなおす。
「さぁ、私と君だけだ存分に戦おうか」
カイオルは2本の剣を水平に重ねるとそれをそのまま薙ぎ払う。
魔力の乗った斬撃は飛翔しゲルドラの体を捉えるが、切断までには至らない。
「その体はどんな攻撃も受け付けないというのは嘘ではないようだ」
攻撃を受けても怯むことなくカイオルを見定める。
「初めから全力で行かせてもらうよ」
ゆらりと近くに姿を現した夜叉は、一瞬のうちにゲルドラの頭上へ移動し、その手に持った剣で攻撃を仕掛ける。
加えられた一撃は見た目以上に重く、ゲルドラの一つの頭を揺らす。
それに反応をした他の頭が夜叉に攻撃を仕掛けるが、その場から姿を消す。
「君に捕らえられるほど、彼は甘くないよ」
カイオルは走りだし距離を詰め始める。
それぞれの頭が状況に合わせて攻撃と反撃を行うため隙は少ない。
距離を詰めるカイオルに攻撃を仕掛けるが、煙のように姿を消し先程まで夜叉が居た位置へ移動している。
「そして私も同じだ」
一太刀攻撃をしたのちに再び違う位置へ姿を現す。
カイオルの意思とは別に攻撃を行う夜叉と、その場を入れ替え変えながら攻撃を行う。
神出鬼没な乱撃に成す術はない。
「どれだけ体表が丈夫であっても、全くダメージがないわけではない。まずは一つ、その首を落とさせてもらうよ」
カイオルと夜叉が左側の首を挟むように対角線上に位置取る。




