交戦#02
「毒か」
それを躱していくが、余裕を持つには広さが足りない。
狭い中で的確に放たれたものを、被弾することなく避けていくには、多少無理な動きも強いられる。
だからそこ、そこに一瞬の隙が生まれる。
「くぅっ!」
肋の痛みで動きが鈍くなった瞬間を見逃すことなく、アーネルは急接近したのちに、首にかかる鍵を奪い取り蹴り飛ばす。
アンベールは勢いよく扉に背中をぶつける。
「さて、目的も果たしたことですし、貴方に騒がれると面倒なので、さよならをしましょう」
ゆっくり距離を詰め、動けないアンベールの頭上に右手をかざす。
魔力展開を行い、確実に殺すことができる攻撃を放つ。
しかしその瞬間、アーネルは手首が切り落とされる感覚に襲われる。
咄嗟に身を引き距離をとり、自身の手を確認するが切断はされていない。
だが、切り落とされた感覚だけが残っている。
「(今のは…?)」
「おい」
アンベールの声に反応する。
「お前、修理費出せるのか」
「一体何を言っているんですか?」
ただ、言葉はアーネルに向けられたものではなかった。
「命の恩人に金銭の要求か?」
「助けろなんて言っていない」
アンベールの居ない扉が切断され、声の主が姿を現す。
「だが、一応礼は言っておく」
「素直じゃねぇな」
黒剣を抜いた状態で部屋に入ってくる隼人。
「初めましてだな、魔術師さん」
「どうしてここに」
「そりゃ色々理由はあるが、言わなくてもわかるだろ?」
「(隠し扉には厄介な封印術が施されていたので、解術するためにはこの鍵が必要なのは間違いないでしょう。ですが、こうなってしまったら、騒ぎになるのも止められない。とはいえここで相手にするのは…)」
「逃げ道はないぞ。大人しく捕まってもらおうか」
「(あー。 …面倒くさい面倒くさい、面倒くさい。いっそうこの城自体を吹き飛ばして、後から回収することができれば一番楽なのですが、目の前にいるあの男がそれを許すはずもない)」
アーネルは小さく息を吐き言葉を続ける。
「捕まると思います?」
瞬時に踵を返し窓へ向かって走り出す。
魔法を窓へぶつけ破壊すると、そのまま飛び出していく。




