新地へ
この世界に来て数日が経つが、外の景色を見るのは今日が初めてである。
孤島であるのは聞き知っていたが、それなりに大きな島のようだ。
そして禍々しさは風景からは感じる事が出来ない。
本当にごく普通の島。
そこに魔王城があり、魔物が多く村や町を興し暮らしているというだけだ。
「人間たちが住む場所と変わらないな」
「種族が違って、生活の成り立ちが違う。たったそれだけの違いしかない。それでも他種族だから、自分たちとは違うからという理由で争う。中にはその種族から得ることが出来る素材が欲しくて、無駄な命の奪い合いが起こる。竜族はどの時代も変わらず、常にその渦中にいる」
「……」
「さて、それでは向かいますか」
ライカが背中から翼を出現させる。
その翼は銀色で全長は10メートルはあるだろう。
そのまま自身の姿を包み、次の瞬間にはドラゴンへと姿を変えていた。
「すげぇ…」
「これが、銀翼のアークドラゴン。竜帝ライカ様の本当のお姿です」
体格は大きくなく、想像より幾分もスマートな姿である。
それに見とれてしまうほど美しい。
「『魔王様、どうぞ』」
「直接声が…」
「ドラゴン族は特定の相手とテレパシーで話すことが出来ます」
「これが、直接脳内に話しかけるってやつか…」
ライカの背中に乗りながら、ドラゴンの身体に関して感じたことがある。
体表は鱗に包まれているわけだが、硬いわけでもない。
本当にトカゲの体表に似ている。
絶対に本人には言わないワードの1つだが。
「それでどれぐらいで着くんだ?」
「『全力で行けば6時間ぐらいかな』」
「海路が1週間で空路が6時間ってすごいな」
「これはライカ様だから可能な話です」
「ん? というか全力で飛んだ場合、結構な速度だよな?」
「そうですね。おおよそモンス王国まで7,000キロほど離れていますので」
「マッハ超える…?」
「マッハとは?」
細かい単位の呼び方は共通ではないようだ。
「いや、その速度だと色々支障がな」
「『風の障壁を作るから大丈夫だよ』」
「なんかよくわからないが、大丈夫なんだよな? 息はできるんだよな? 死なないよな?」
「『心配しすぎだよ。障壁がなくても死んだりしないよ』」
「いや、完璧な障壁を頼む」
様々な問題を抱えながらモンス王国へ向かい始めた。




