真夜中の来訪者#02
「ひどくやられたようですね」
「そんなことを言いに来たのか」
「例の話について、考えてもらえたか確認をしにきました」
「それは断ったはずだ」
「では、あの者を信じると?」
少しの沈黙が訪れる。
「ここまで衰弱しきった国に突然現れて、快方へ導くなんて都合が良すぎるとは思わないのですか? 更には公女様の後ろ盾まで手に入れ、好きに動き回っている姿まで確認できます。このままでは」
「ゼロの魔術書が奪われてしまう」
「えぇその通りです。ゼロの魔術書が奪われてしまってはこの国どころか、世界をも襲う災厄となりかねません」
ひとつ息を吐いてアンベールは言葉を返す。
「何度でも言うが、俺はゼロの魔術書なんてしらない。それにそんなものがこの国にあることも聞いたことがない。それになぜ国王様ではなく、俺に聞くんだ」
「先ほど国王様にも聞いてきましたが、もう貴方しか知る人がいないのです」
「言っている意味がわからない」
アーネルはアンベールの胸あたりを指差す。
「その首から下げている鍵の部屋には入ったことがありますか?」
「何故、鍵の事を知っている?」
「私のような魔術師はその魔力と引き換えに、身を守る術が非常に少なく危険に晒されることが多いのです。そのため、訓練によって僅かな違いを気付けるようにしているのです」
服の上から手のひらで鍵を押さえる。
「この鍵の部屋の場所は知らない。もし知る機会があったとしても、有事でない限り使うことがないように言われている」
「今ではないと?」
「存在はどうであれ、国は快方へ向かっている。今ではない」
アーネルは少し不満な顔を浮かべる。
「それが狙いだとしてもですか?」
「もしこの鍵が狙いで、お前の言う物を探しているのであれば、そんな面倒なことはせずに直接奪うだけの力がある。回りくどいことをすることによる、利が一切ないだろう」
「随分と高く評価されたのですね。あれほどまでに敵意を向けていましたのに」
小さく呆れ混じりのため息をつく。
「俺も一つ質問をしていいか?」
アンベールは鍵から手を離し、アーネルに尋ねる。
それを快諾する。




