隼人vsアンベール【前編】#01
「よぉ、逃げずにちゃんと来たな」
「何のつもりだ」
「理由はいろいろあるけど、とりあえずお前をボコろうかなって」
「意味がわからない。アンジェリーク様から言われたから来ただけだ。俺は帰らせてもらう」
そういうと踵を返し、来た道を戻り出す。
「やっぱりあの騎士長の部下は根性なしか」
「今なんて言った?」
足を止め言葉を返す。
「そりゃ任務中に死ぬわけだ。部下がこんな奴じゃ、上に立ってるやつも大したことないに決まってるからな」
「貴様っ!」
隼人と向かい合い、明らかな怒りを見せるアンベール。
僅かばかりの殺気を奮わせる。
「防具だけ帰ってきたみたいだけど、スライムかなんかにやられたんじゃないのか?」
「口を閉じることが出来ないなら、その首を切り落として喋ることが出来ないようにしてやる」
アンベールは剣を抜き、隼人へ向かい歩き出す。
「そんな剣で大丈夫か? さっきは一太刀も掠らなかっただろ? ってそうか、そういう教え方しかできなかったんだな、カイオルのやつは」
隼人が喋り終わると同時のタイミングで、アンベールは一息で懐へ潜り込む。
比較的開いていた距離を一気に詰め、相手の判断を遅らせそのまま斬り払う。
しかしそれを槍の柄で受ける。
「さっきよりはマシだな」
アンベールは飛び退き距離をとり、自身の刃を確認する。
本来であれば切断できているであろう木製の柄を、切断することが出来なかった。
自然と自身の剣に異常がないか疑うのは自然だろう。
ただ隼人が持っている槍には、魔力を纏わせてある。
魔力が定着しやすい物質ではないため、コントロールは必要だが魔力を帯びている分、強度は非常に高い。
「それじゃこっちからも行くぞ」
巧みに槍を操りながら一気に距離を詰める隼人。
リーチがある分、かなり有利に戦いを進めることが出来る。
「ほらどうした? リーチの差がある相手との戦い方ぐらい習ってんだろ?」
「知ったような口をきくな!」
「だから、冷静さを失うなって」
守りに徹する剣をはじき、守りが甘くなった脇を勢いよく打ち込む。
「ぐぁっ!」
「今ので一回死んでるぞ」
打たれた脇を抑えながら息を整えるアンベール。
大きな欠伸をしながらそれを待つ隼人。
まるで子供をあしらうような感じだ。




