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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.07~死の国、モンス王国と鬼神カイオル~
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アンベール・ノーリッジ#01

「ちっ!」


 完全な隙を付いての攻撃を避けられたことに対して、明らかな苛立ちを見せる。


 突き出した剣の柄を手元で直角に回し、さらに薙ぎ払う。


 だがそれも身を引いて最小限の距離をとり避ける。


「やめとけって。お前の剣は俺には届かない」


「黙れ!」


「ようやく喋ったと思ったら、それかよ」


 男は連続して隼人に攻撃を仕掛けるが、そのどれもが避けられてしまう。


 決して太刀筋が悪いわけでも、速度が遅いわけでもない。


 ただ単純に隼人と男の実力に差がある。


「やめるつもりがないなら、力ずくで止めるぞ?」


 隼人は左手に付けているベネスリングから魔力を引き出し、短剣を形成しそれを男にめがけて投擲する。


 しかし、それに気付きギリギリのタイミングで防ぎ、すぐに攻撃に転じる。


「何をやっているのですか!」


 だが、大きな声でその攻撃は止まった。


 声のほうを振り返ると、そこには慌てた様子のアンジェリークがいた。


 駆け寄ってくるアンジェリークを見て、剣を鞘に納める男。


「姫様、お身体は」


 そう声をかけた男の頬に、鋭い平手打ちが一発。


 驚く隼人を尻目にアンジェリークはさらに言葉を放つ。


「王国の騎士が一般人に剣を振るうとは何事ですか! その剣は民や国を守るためものであって、傷つけ奪うものではありません! あの人から一体何を学んだのですか!」


 男は叩かれた頬を庇うこともなく、真っすぐアンジェリークの叱責を受ける。


「ハヤトさん、大変なご無礼をお許しください!」


 深々と頭を下げるアンジェリークを止める。


「いや、俺も少し焚きつけるようなことを言っちゃったからさ」


「いえ、こちらに非があります。救っていただいた恩人に対して、こんな愚行を…」


「とりあえず、気にしてないからさ」


「アンベール、この件はお父様に報告させていただきます。部屋に戻っていなさい」


「わかりました」


 アンベールと呼ばれる男は歩き去っていった。


 小さなため息をつく隼人にアンジェリークは再度謝罪を行う。


「申し訳ありませんでした。お怪我はないですか?」


「怪我はないけどな。あいつは何なんだ? 騎士だよな?」


「彼はアンベール・ノーリッジといいます。知っての通り騎士で間違いありません。現在は特殊な任に就いていて、その報告に城へ戻ってきたところです」


「(クレムが言っていたのはあいつの事か)」


「少し前まではこんなことをするような人物ではなかったのですが、やはりあの人がいなくなったのが影響しているのでしょうか…」


 表情を曇らせる。


 その表情からはどこか寂しさも感じ取ることが出来た。


「もし差支えがないなら、少し話を聞かせてもらえるか?」


「わかりました。それでは場所を変えましょう」

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