隼人vs竜帝ライカ#03
「石の槍を生み出してたわけね。あの砂煙はこのための布石だったわけか」
「それじゃ、約束通り」
「まぁ約束というか、元から私は魔王様と主従契約を結んでいるけどね」
「はぁ?」
「今回はベルザがそういう感じだったから、話に乗っただけ。私も魔王様に少しでも感覚を取り戻してほしいとは思っていたから」
「そういうことです。魔王様」
つまりこの戦いはどっちに転んでいても結果は変わらなかったということ。
「ライカ様が戦いの中でそれらしいことを口にされた時は、バレてしまうかと思いましたが、気が付かれなかったようで」
「それらしいこと…」
『身体が痺れて動けないでしょ。昔は障壁を張って魔力抵抗があったから、こうはならなかったけどね』
ライカの言葉を思い出す。
さすがにあの状況でそこまでの判断はすることはできない。
「今回の戦いで魔王様の魔力の扱いに関してわかったことは、先代の魔王様の誰よりも器用だってこと」
「戦いの中でも言っていたが、その器用っていうのはどういうことなんだ?」
「魔王様が使った魔法自体は高度なものではないけど、その使い方は真似できるものじゃない」
そういうとライカは言葉を続けた。
「まず顕著なのは雷を使った身体能力強化。本来なら身体強化魔法である≪スクード≫を使うことで、自身の能力を上げるのが普通だけど、それではなく私と同様の手法を取った。この手法は≪スクード≫を使えない者が、異なる方法で自身を強化するやり方なんだけど、負荷のかけ方が難しいから推奨はされてない。私はドラゴンだからある程度は無茶な調整でも問題ないし、他の種族が扱うよりも大きな負荷に耐えることが出来る。だけど、魔王様はそうはいかない。少しでも調整を失敗すれば、内部から細胞の崩壊だってあり得る」
「細胞の崩壊…?」
「もちろん、だって雷を体に流して負荷をかけているわけなんだから」
無知ほど恐ろしいものはない。
失敗をしていたら今頃どうなっていたのかわからない。
「あと、個人的には私を追い詰めた石の槍。これはどうやってるの?」
「説明がしにくいが、要はイメージだな」
「イメージ… 例えば、雷でなにか同じようなことはできる?」
「それなら、こんなのはどうだ?」
隼人は雷を手に集中させ爪のようにする。
「本当にすごいや。本来、魔法っていうのはその属性を放出するのが主流。だから魔王様のように魔法を別の形として具現させるのは、非常に難しいの」
そうは言われても、扱うことが出来る隼人にはその難易度が理解はできない。
ただ、ライカの話からすれば通常であれば火球だったり、落雷のようにそのまま魔力を放つことになる。
有名RPGのような呪文に近いということだ。
「前提を加味したとしても、ここまでできるなら十分だとおもう」
ライカは満足そうに歩き出す。
「さぁ、魔王様。外へ行きましょう」
少し歩き城の外へ出る。




