クレム・フォート#02
「まぁそうだろうな。だが、今回の魔術師は単独で国を渡ってきたってのが問題だ」
「それが何かおかしいのか?」
「魔術師が単独で国を渡る様な事はないんだ。稀代の魔術師様ならわからないこともないが、国に仕える一般魔術師なら、必ずその国から護衛が付いてくる。事前にこちらも遣いを送るということを伝えていたとしても、ゼロはありえないんだよ」
「街の入り口で別れたって可能性はないのか?」
「護衛に付くのであれば、必ず一人は王座に挨拶へ同行するのが基本だ」
「騎士の流儀ってやつか」
「なんにせよこの国の状況を知っていて、さらに自然に国に入り込むには絶好の機会だろう」
要素としては決定力に欠ける内容だが、ひとつの考え方としては押さえておくには良いだろう。
ただ別途、派遣された魔術師の情報を集める必要はありそうだ。
「確認なんだが、この病が流行り出したのは三か月ぐらい前という話だったよな。そこから魔術師が到着したのが一か月後」
「あぁ、そうだな」
「イサンダには確認を取らなかったのか?」
静かに首を横に振る。
「俺はよくわからねぇが、伝思術っていう術で直接連絡をすることが出来るから、何かあれば言って欲しいといわれたよ」
「(でんしじゅつ? 今度ライカに聞いてみるか)つまり、国への報告手段も限定されてしまったわけか」
「すぐに伝えることが出来るのに、伝書を送る必要はないからな。国王も直接魔術師に伝えているらしい」
「おそらく伝書を送っても届くことはないだろうけどな」
少しの沈黙を挟みさらに隼人が質問をする。
「で、カイオルが生きているっていうのは?」
「騎士の勘ってやつだ」
呆れたように苦笑いをする隼人。
「まぁそんな顔するな。この後、特に用もねぇなら城に戻ってみるんだな。確か今日があいつが帰ってくる日だったと思うからよ」
「あいつ?」
「騎士長の秘蔵っ子だ。あいつが諦めてねぇってんなら、騎士長は生きてるよ」
「結局、根拠はないんだな。だけど、ありがとよ」
そう言って席を立ちあがり、クレムの横を通り過ぎた当たりで、思い出したように声をかける。
「俺もカイオルは生きてると思うぞ。理由はないけどな」
「ありがとよ」
隼人はそのままギルドを後にする。
そしてそのまま城へ戻り、部屋を目指して歩いていると、正面から一人の男が歩いてくる。
無言のままにすれ違うタイミングで払うように剣を抜き、隼人の首を狙って攻撃を仕掛けてくる。
それを屈んで避けたのちに距離をとる。
「この城の騎士はすれ違いざまに人を斬り払う教育がされているのか?」
「……」
「返事もなしかい」
見た目は若く年齢は隼人に近そうだ。
その表情は澄ましているが、どこか怒りを感じることが出来る。
騎士なのは間違いないが、突然襲われる覚えは何もない。
「もし俺を不審者だと疑っての行動ならお門違いだぞ」
そう言いながら木札を取り出し見せる。
「ここに証拠もあるだろ?」
隼人が言い終わるタイミングで、一気に距離を詰めた男が鋭い突きを繰り出す。
それを最小限の動きでかわす隼人。




