クレム・フォート#01
「あんた昨日も来てたな。こんな時期によそ者が何をしに来たんだ?」
「昔来たことがあってな、それでたまたま立ち寄っただけさ。あんたこそこんな状況なのになんでこの街に居続けてるんだ」
「ここが俺の郷里だからさ」
注文した飲み物が届く。
麦を発芽させ発酵させた飲み物で、いわゆる麦酒と呼ばれるものだ。
それとただの水が一つ。
「それで俺に何の用だ」
「あんた、カイオルのところの騎士だろ? なんで昼間っからこんなところで飲んでるのかは知らないが」
「…何者だ兄ちゃん」
この席を選んだのも、話しかける相手を選んだのもすべて見覚えのある人物だったからだ。
以前、サラマンダ討伐選考でライカとカイオルが戦った闘技場で唯一関わった人物。
隼人はフードから少し顔を覗かせる。
「見覚えないか?」
「…あの時、騎士長の技を知っていた兄ちゃんか。確かハヤトだったか?」
「覚えてくれてて光栄だよ」
「なんだ、雰囲気が変わったな」
城の騎士たちからもそうだが、強い敵対心を感じることが出来ないということは、やはりカイオルの口からは隼人達のことは伝わっていないようだ。
それでも突然現れたことによる警戒はされているようだが。
「えっと…」
「俺の名前はクレムだ。クレム・フォート」
「クレム、単刀直入にいう。カイオルのことを聞かせてくれ」
「何故だ?」
「俺もいろんな話は聞いたが、どうしても信じることが出来なくてな」
「……どこまで知っている?」
隼人は今まで聞いた内容をそのまま伝える。
関係者しか知りえない情報まで知っていることに、驚かれながらも話を聞く。
それを踏まえてカイオルについての詳しい情報に関して質問をする。
「正直な話、俺が知っていることもハヤトが知っている内容だ」
「そうか」
「だが、あの人の遺品として持ち込まれた物に微かな違和感があった」
「どういうことだ?」
「装備品の中でも防具ってのは身を守るために、いろんな傷ができるものさ。戦闘以外でも小石や砂、防具同士がぶつかったりな。長い間こういう仕事をしていると、見ただけで何でできた傷なのかわかってくる。だからこそ騎士長の防具に付いていたものは、魔物と争っただけのものじゃない」
クレムの話から推測すれば、次第に今回の裏が見え始める。
「いろいろ推測でしかない部分も多くあるが、イサンダから派遣された魔術師ってのが一枚かんでいる可能性が高い」
「理由を教えてもらえるか」
クレムは麦酒で喉を潤しながら話を始める。
「まず持ち込まれた防具には微かに魔法による損傷があった。持ち込んだ量からしたら、他の部分は魔法での損壊が激しいか、単に荷物になるからか理由はそんなところだろう。それに魔術師が持ち込んだっていう背景も別におかしい部分はない」
「そういえばなんで魔術師がカイオルの防具を持ち込んだんだ?」
「騎士長はイサンダ辺境付近の調査の任が出されていたからな。そのついでに魔術師の護衛をしてモンスへ戻ってくる予定だった。だから魔術師と合流をしていること自体は、なにもおかしい点はない」
「なるほどな。そうなると、合流後に襲われたってことか。でも今の話だけなら疑う要素は何もないぞ」
実際に話の内容には特別怪しむ要素はない。
カイオルが下手をして、それを魔術師が見つけて持ち込んだという話もありえるからだ。




