カイオルの消息#01
「さて、話を始める前に騎士達の警戒を解いてくれるか? どうせ殺すつもりも、捕らえるつもりもないんだろ?」
国王が騎士たちに軽く目配せを行うと、全員が元の姿勢に戻る。
「まずは質問から答えることにしよう。単刀直入に言うと俺たちの国、魔王国と友好関係を結んでほしい」
「魔王国だと!」
全体がざわつき、落ち着きがなくなる。
「そういう反応になるのは分かっていたよ。ただこれは冗談でもなんでもない」
「与太話にもほどがある。古来より争ってきた者同士がどうして相容れようか」
「それじゃ、これからもお互い争って生きていくのか? 無駄な犠牲を払って、それで何になる? これまで魔物が人間を襲った背景には、食料の確保に関することがほとんどだ。そして人間が魔物の一部を素材にして、生活に役立てていることも知っている。ただそれは魔物から供給してもらうことだってできる。お互いが助け合えば解決する話で、なにも争うだけがすべてじゃない」
「今後一切、魔物が人間を襲わない保証がどこにあるのだ」
「それは人間にも言えることだ。だが、そのために俺がいる。そして各国の王がいる」
「お主は一体、何者なのだ」
「俺は魔族を統べる王だ」
「魔王だというのか?」
先ほどとは打って変わり、静まり返る。
それもそうだろう。
目の前で食事をしている人物が魔王と名乗り出たのだから、理解も追いつかないだろう。
「それで俺たちの目的は話したうえで、どう考える?」
小さく息を吐き、目を閉じたのちにしばらくして国王は再び口を開く。
「その若い風貌で魔王と言われても、俄かには信じられぬ。だが、事実だとしても今は国を助けようとしていることには変わりない。ひとまずこの話は国民全員の治療が終えるまで保留にさせてほしい」
「あぁ、それで構わない。ちなみにこちらからも質問をいいか?」
「申すがいい」
「この国と東の国イサンダの関係がよくないのは本当か? 噂では戦争が起こるんじゃないかと言われているようだが」
この質問に目を丸くする国王。
様子からしてこの話は真実じゃないということは察することが出来た。
「それこそ与太話だ。モンスとイサンダがいがみ合うことはない、実際にこの緊急事態で唯一力を貸してくれたのはイサンダのみだ。この病気を呪いと疑った際に、優れた魔術師を派遣してくれたのだ」
「(それじゃ初めにベルザが聞いた話は嘘だったってことか? いったい何のために嘘を? それも側近であるベルザに対して)」
「その噂の出所をしりたいところだが」
「すまない。俺も又聞きで耳に挟んだ程度で出所はわからない。ただ噂を立てることで得をする奴がいるってことだろう」
「忠告、ありがたく受け取らせてもらう。他にはないか? なければこれで食事を終えようと思うが」
その問いに対してライカが質問を行う。
「カイオルは今どこにいるの?」
「…カイオルか」
深くため息をつく。
周りの騎士達からも、どこか意気消沈をした様子を感じ取ることが出来る。
「カイオルは死んだのだ」




