羽うさぎ#02
「流石にそのままじゃないけど、かすかに跡が残ってるね」
草花が生えてはいるものの、窪んだ地面や抉れた場所はそのままになっている。
特に酷いのは雷翔ミリシアを直撃させた地面で、それこそ小さなクレーターのようだ。
「さてと、ここなら大丈夫かな?」
ライカはゆっくり息を吐きながら目を閉じながら集中を始める。
そしてそのまま大規模な魔力探知を始める。
その範囲は森全体にわたり行われているが、これはライカだからこそ成せている技だ。
通常可能とされる魔力探知は、自身を中心に半径100メートルが限界値と言われている。
だがライカは数キロ範囲を行うことが出来る。
これはクィルとの訓練があってのものだが、集中をしないといけない特性上、同時に攻撃などの手段は行えない。
「(絶対に身に付けろって言われて、こんなに広範囲の探知訓練なんて絶対に役に立たないって思ってたんだけどな)」
森の中にいる魔力を持つ生き物たちの反応を、手に取るように感じることが出来る。
それだけ精度も高い証拠である。
「(ちがう。こいつでもない。ちがう)」
魔力探知に引っかかったものから、気になるものだけをチェックしていく。
微弱なものから少し大きめのものまで、すべてをチェックしていく。
そうしてしばらくしてライカはゆっくり目を開ける。
「この森は特に異常はないか」
ライカは背中から翼を出しその場を飛び立つ。
その後、ライカが城へ戻ってきたのは日が沈んでからだった。
隼人は先に戻ってきており、閻狐と談話していた。
「おかえり」
「ん、ただいま」
「何か情報は得られたか?」
ライカは開いている椅子に腰を掛け、特別得られたことはないと話す。
「ハヤトはどう?」
「俺か? 俺は…」
話をしようとした時に部屋をノックされ扉が開く。
そこには国王の姿があった。
「帰ってきておったか。どうだ、食事にせんか? 専属のシェフが腕によりをかけて準備しておる」
今思えばベルミナに着いてからは何も食べていない。
状況が状況だけに仕方がないのだが。
「まぁ、腹ごしらえしながらでも話をしようか。そっちのほうが集中できるだろ?」
わずかに口元から涎を垂らしているライカに問いながら部屋を後にする。
通された場所は絵にかいたような、長いテーブルが準備されている部屋だった。
上座に国王が座り、離れた位置に隼人とライカが向かい合って座る。
テーブルには赤色のクロスが敷かれ、所狭しと料理が準備されている。
間違いなく食べきれる量ではない。
「さぁ、遠慮せずに食べてくれ」
そういう合図とともにライカは準備されていたステーキを頬張る。
飲むように消えていくステーキに驚きながら、シェフは追加のステーキの準備を始める。
それに呆れながら隼人も箸を進める。




