羽うさぎ#01
「気になることと言えば、今も掲示板に依頼として出ている羽うさぎですかね?」
「羽うさぎの依頼?」
羽うさぎは食用としても需要が高い魔物である。
身体に見合わない大きな耳が羽のように見えることから、その名前がついている。
魔物に属されてはいるが、耳の大きいただの兎である。
繁殖力が高いこともあり駆除対象として、この依頼はよく見かけるため特別おかしいところはない。
駆除された羽うさぎは市場によく並んでいる。
「羽うさぎ自体は特別珍しいことはないんですけどね。ただ依頼はギルドから出すことが多くて、一般依頼が出されることは珍しいんです。ギルドとしては報奨金を直接出さなくて済むので助かりますが。それと依頼を出されている期間が長いんですよ。それこそ病気が流行る前からずっと依頼されているんです。繁殖力が高いといえ、ここまで長期間になることはなかったので。だから一時期は凄い量の羽うさぎが市場に並んでたんですよ。私は苦手なので食べないんですけど」
「確かにそれは気になるな」
「もし受けてくれるのであれば、ぜひギルド登録を!」
再度進めてくる受付嬢に軽く断りを入れて掲示板の前戻ると、先ほどまでいた男はいなくなっていた。
「依頼主は匿名か…」
「あ! 一度だけ依頼主に会ったことありますけど、背の高い女性でしたよ! 名前までは教えてくれませんでしたけど」
「背の高い女性ね。話は変わるけど、カイオル騎士長のことは何か知らないのか?」
「あの人は良くここに顔を出してくれたので、私も騎士を抜けたと聞いた時はびっくりしました。いま思えばサラマンダ討伐依頼の後から様子が違っていた気がします。元気がないような、何かに悩んでいる様子でした。抜けたのはこの病が流行り出してしばらくしてからだった気がしますが、抜けた後はさっぱりここにも顔を出していないので、どこに行ったのかはわからないですね」
「そうか、ありがとうな」
「また来てくださいねー! その時はぜひギルド…」
受付嬢の言葉を最後まで聞かずにその場を後にする。
「カイオルは所在不明か。それにしても、羽うさぎね…」
隼人は他の情報を求めて街の中の探索を続ける。
一方、ライカはサラマンダ討伐の際に訪れた、ドボル大森林へ足を踏み入れていた。
「魔力の反応はないか」
魔力探知と竜眼を駆使しながら大森林の中を探索する。
今回の件に多少の心当たりがあるとするライカは、ある程度の目星を付けながら情報を集めていた。
その一番目がドボル大森林。
この場所が怪しいというわけではなく、隠しやすいという理由だ。
「あいつらってば暗くてジメジメしたところが好きだから、こういう場所は好むはずなんだけど。それに隠れやすいだろうし」
倒木をどかすと、1匹の羽うさぎが姿を現した。
「あ、ごめんね。ここら辺はキミのお家だったかな」
そう言いながらどんどん先へ進んでいく。
「確証はないし、もしかしたら他の違う奴の仕業かもしれないし、できれば会いたくもないけど」
ぼやきながらも探索を続けていく。
しばらくすると目的の場所へたどり着く。
そこは以前、グレイヴィッツやカイオルと争った場所だった。




