救いたい人#02
騎士が国王を止めるが、誰の護衛も必要がないと発して部屋を後にする。
一切喋ることなく城の中を歩いていく。
目的地も知らされず、すれ違うメイドたちは立ち止まり頭を下げたまま見送る。
城から見る街並みは、実際に歩くのとまた違う顔を見せる。
大きく広がる街並みが誇らしくしているように感じる。
しばらく歩くと一つの部屋の前に辿り着く。
ノックを行い声を掛け、静かに扉を開き中に入る。
広々とした部屋は綺麗にされており、中にいた1名のメイドがこちらに気付き挨拶をする。
天井まで続く大きなガラス窓は装飾が施され、正面のクィーンサイズのベッドがあり天蓋がついている。
「状態は?」
国王がメイドに訊ねると、曇った表情で答えていた。
状況から察するに、国王に近しい人物が病に侵されていることはわかる。
そうでなければ、これほどまでに大きい部屋にメイド付きで過ごす人物もいないだろう。
促されるままにベッドへ近づき、そこへ寝ている人物の顔を覗く。
そこには非常に整った顔をした女性が寝ているが、服の合間からは紫の斑点が酷く目立つ。
恐らくこの症状が出始めてかなりの時間が経っているのだろう。
「私の娘だ。娘は病に侵されておってな、この状況を知る者はそこのメイドを含めほとんどおらぬ」
状況を隠している理由はいろいろあると思われるが、それには触れずに話を聞く。
「妃には先立たれてしまってな、私の大切な宝なのだ。もし、お前たちの言う治療が本当なのであれば、娘を助けてはくれないか? 国民を差し置いて自分の娘を優先して助けて欲しいなど、国王としてあるまじき発言であるものをわかっておる。だが…」
「国王である前に一人の親なんだ。別に自分の娘を助けて欲しいって願ってもおかしくはないだろ」
隼人は国王の言葉を遮りそう言う。
ライカにタブレットの入った小瓶を渡し促す。
「ちょっと起こすよ」
そう言い声を掛けながら体を少しだけ揺する。
ゆっくりと目を開きこちらを見つめる。
「貴方たちは…?」
「話は元気になってから。とりあえず、これ一人で飲める?」
タブレットを見せながら訪ねると、困った表情で娘は国王を見つめる。
「お前の病気を治す薬だ。飲めるか?」
そう答えた国王に対し、小さく頷きメイドの補助を受けながら上体を起こす。
すでにグラスに水を注ぎ、待機しているメイドの手際の良さに感心する。
手渡されたタブレットを口に放りこみ、水を受け取り流し込む。




