救いたい人#01
「人間に現れている斑点は魔力によるもので、対象者の生命力を術者に送る役目をしているの。だからどんな検査をしても原因はわからない」
「病が魔力だという件であれば、呪いの類を疑い魔術師達にもその調査はさせた。だが、魔法に精通している者からも、そのような報告はない。それでも魔力によるものだというのか?」
「例えどれだけ優れた魔術師でもわかるわけないよ。これは感知できるものじゃない」
「では何故これが魔力によるものだとわかるのだ」
「それは」
ライカの言葉を制して、隼人が話をする。
「いまはそんなことよりも、俺たちの話を信じるのか信じないかだろ。もちろん突然現れた奴らを信じろっていうのも、簡単な話ではないことはわかっている。だが、少しでも時間が惜しくないのか?」
「ふむ」
自慢の髭を撫でながら目を瞑り少し考える国王。
身元もわからない人物の話を立場上、簡単に呑み込めるものではない。
王としての決定は、国としての決定である。
それだけ国王の決断には責任がある。
「どのように治療するのだ?」
「ハヤト、竜涙草のタブレットを頂戴」
内側のポケットから白色のタブレットが入った小瓶を取り出す。
竜の都、ミストセルラルでしか入手することが出来ない特殊な草。
竜涙草はその草に宿る魔力により、服用者の怪我や不調といった症状を解消する効果を持つ。
服用方法は問わず、万能薬という言葉では片づけることが出来ないほどの効力を保持している。
しかし草のままで長期間の持ち運びはできないため、それを乾燥させ調合したのちに固めたものだ。
量産することもできず、隼人達がミストセルラルで滞在した期間ですら、複数個しか作ることが出来なかった。
「この薬を使う。実際に試すことが出来れば証明はできるけど、この場に発症している人間はいる?」
周りの騎士が互いに顔を見合わせながらざわつくが、該当者はいないようだ。
ライカは小さく息をつきながら、小瓶を隼人に返す。
「いないなら証明しようがないか」
「この場に発症者がいないってことは、喜ばしいことだと思うけどな」
「もし…」
国王は深刻そうな面持ちで話を切り出す。
「もし、お前たちの言うことが本当だとすれば、願いたいことがある」
そう言うとゆっくりと立ち上がり、隼人達の脇を通り付いてくるように言う。
その言葉に隼人とライカは顔を見合わせながら、静かに後をついていく。




