廃れた街、ベルミナ#02
「俺たちはあの後すぐこの街を離れたから、詳しいことまで知らないんだ」
「そうなのか。それでなんでまた戻ってきたんだ? しかもこんなタイミングで」
「俺たちもその話が聞きたくて、おっちゃんの店に来たんだよ。居るかどうかは知らなかったけどな」
そう切り出して話を始める。
この街から活気がなくなった理由や、病が広がり始めた時期など知っていることを教えてもらうことが出来た。
「だから人もいなくなっちまって、今じゃこのありさまだ」
頭に手を当てながら笑い飛ばしながらそういうが、心中は笑っていられないほど苦しいはずだ。
それでも明るく振舞おうとするのは、このおっさんの人の好さなのだろう。
「その病が流行り出す前には、ほかに何か異変はなかったのか?」
「異変っていうのは特になかった気がするな。あぁ、そういや一度だけ羽うさぎが街に迷い込んできたな。特段害のある魔物じゃねぇし、警備巡回をしていた騎士が見つけて倒していたがそれぐらいか? まぁ羽うさぎよりも衝撃だったのは、さっき話した騎士長が王国騎士を抜けたってことだな」
「カイオルが騎士を辞めた?」
「あぁ、まだ活気があった頃に他の騎士達が話していたから間違いないだろうさ。すでにこの街からも去っているという話だが、詳しいことはわからねぇな。詳しく聞きたいならギルドを訪ねてみると良いさ、あそこは昔と比べりゃ減ってはいるがまだ冒険者がいるはずだ」
「そうかありがとう」
「またこいよ!」
元気に手を大きく振りながら見送られる。
想像以上に情報の収穫をすることができ、情報屋に転職したほうがいいんじゃないかと思うほどだ。
ただそれよりも、1つ問題を見つけてしまった。
「ハヤト見えた?」
「あのおっちゃん首辺りに、話に出てた斑点があったな」
出店から姿が見えなくなるように隠れながら話をする。
おっさんの首には服の隙間から紫色の斑点を確認することが出来た。
もしそれが本物であれば、おっさんも病にかかっている可能性が高い。
「話じゃ原因不明の病だって言っていたが、そんなことあるのか?」
「私もそういうのに詳しいわけじゃないけど、世界を探せばあるんじゃない? ただそういう病気って血液を調べることが出来れば、だいたいの原因が判明するはずだけど、それすらもわからないって話だったよね」
「そうだな」
「それじゃあさ、考えられる可能性はもう一つしかないんだよね」
ライカは何か確信があるかのように、こっそりとおっさんを見る。
医者でもわからない病気を竜族の一人の女の子が解明できるのか、それに関して少し疑問を抱きながらライカを見守る。




