廃れた街 ベルミナ#01
普段は賑わっている広場には人の姿すら確認できない。
所狭しと並んでいた出店は、屋台の形を残し荒れ果てている。
しばらく人の手が加えられていないようだ。
国全体が暗く重い雰囲気を漂わせている。
「なんだここ、本当にベルミナなのか? 前とは随分と雰囲気が全然違うぞ」
「人の気配はあるみたいだけど」
隼人達がギルド登録をしている街、ベルミナ。
その街は以前とは大きく異なる顔を隼人達に見せる。
「…ちょっと行きたい場所があるんだがいいか?」
「どこへ行くの?」
そういうと隼人は広場から少し離れた出店に向かう。
どこの出店にも人影はない中、一人だけ商売をしている人がいる所を見つける。
もちろんお客は誰一人としていない。
「よぉ、おっちゃん」
「ん? あぁ! 誰かと思ったらあん時の兄ちゃんじゃねぇか! 久しぶりだな!」
この店は裏名物ピークスを販売している。
赤竜討伐の際に情報収集で立ち寄ったお店だ。
「どうだい、裏名物ピークス買っていかねぇか?」
「あぁ、一つもらうよ。5シルバーだったよな」
「まいどあり! そちらのお嬢ちゃんもどうだい?」
「私はいらない。臭いし酸っぱいし」
「がっはは! 子供にはまだわからねぇか!」
ムスッとしたライカを横目に、支払いを済まし商品を受け取る。
「ところで兄ちゃん、しばらく見なかったがどこへ行ってたんだ? たしかサラマンダ討伐に参加したんだよな?」
「あぁ」
「ドラゴン相手に大きな被害もなく討伐できたんだろ? 話によれば騎士長が一人で討伐したってことだが本当か? 合流した冒険者が意識を失った騎士長を見つけて、話を聞いたら討伐したって言ったらしいじゃねぇか。辺りには激しい戦闘の跡もあって熾烈を極めたんだろうな。ただドラゴンの死体がどこにも見当たらなかったって話だけどな」
隼人とライカはアイコンタクトをとる。
ピークスのおっさんが言うことを信じるのであればカイオルは生きている。
戦闘の跡がライカとグレイヴィッツ以外の物であるとすれば、その場を離れた後に戦闘が繰り広げられたと予想できる。
カイオルがサラマンダを討伐したという嘘をついたことに関して気にかかる部分は生まれるが、ベルザの姿がそこにないということは死んではいないということだ。




