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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.02~竜帝:ライカ編~
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隼人vs竜帝ライカ#01

 戦闘経験はもちろんだが、喧嘩の経験すら少ない隼人にとってこの戦いは無謀だ。


 駆け出しの勇者が四天王の一人を相手にする、普通はあり得ないことだ。


「間違いなく負けイベなんだよな…」


 負けて背中に乗れないだけなら問題はない。そうなれば海路に変更するだけだ。


 むしろ今はもう海路でいいからこの状況を脱することを優先したい。


 ただ主従契約という大層な話に、負けたときの枷がないはずがない。


 もし枷が存在しないとなればライカにとって何一つメリットがない。


「魔王様が来ないならこっちからいくよ!」


 ライカが身体を沈め一呼吸の間に間合いを詰められる。


 顔がぶつかるぐらいの距離しかない。


「まずは挨拶替わりだよ」


 ライカが右手で殴りかかる。


 意識が強く向いてしまい反応が遅れたが、それをギリギリで避け距離を取る隼人。


「あれ? 今のを避けるってことは、身体は動きを覚えてるってことかな?」


「はぁはぁ!」


 正直なんで避けれたかはわからないが、確かに違和感を覚えた。


「じゃあ、どんどんいくよ!」


 再び距離を詰め攻撃を仕掛けてくる。


 攻撃を避けながら後ろに下がっていく。


「いつまで避けるつもり?」


「そんなこと言われてもな!」


 隼人の背中が壁にぶつかる。


「やべ!」


「もらった!」


 ライカの拳が壁を貫く。


 ギリギリで攻撃を回避することが出来たが、隼人の体力の消耗がひどい。


 再びライカと距離を取る。


「正直あんなの一発でも当たったら死ぬだろ…」


 先ほどの違和感の正体を徐々に理解し始める。


「(この世界に来てから明らかに体が軽いし、動体視力も上がっている気がする。恩恵かなにかか?)」


「本当、よく避けるね」


 壁から拳を引きぬく。


「…試してみるか」


 今度は隼人からライカに向かっていく。


「おっと。今度は魔王様の番? でも今度こそ避けれないかもね」


 ライカも合わせるように一気に間を詰める。


「もらった!」


 ライカの攻撃のほうが早い。


 だが、それを最小限の動きで避け右手を広げライカの顔に被せる。


「くらえ!」


 掌に炎を集中させる。


 そのまま手でライカを押し出すと同時に爆発を起こす。


 押し出す力と爆風により、ライカは後方に勢いよく吹き飛び壁にぶつかる。


 ぶつかると同時に城が揺れ壁が崩れ、粉塵が巻き上がる。


「うまくいった…か?」


 想像以上ではあったが結果としてライカに攻撃を加えることができた。


 それと同時にこちらの世界に来てから、自身の能力が高くなっていることを実感する。


「(あの女神の恩恵か、それとも勇者ってだけで能力が高く設定されてるのか…)」


「びっくりした~」


「…でもまぁ、そりゃそうだよな」


 体を叩きながら粉塵の中から姿を現すライカ。


 その姿を見る限り、一切のダメージを負わせることが出来ていない。


「昔と違った戦い方で新鮮だね」


「そりゃ昔を知らないからな」


 なんとなく身体は付いていけているが、このままでは勝ち目はない。


「あとはあの女神から渡されたこの小さい剣に頼るか?」


 期待を懸けるにはあまりにも小さすぎる剣。


 首にかかるチェーンを外し手に巻き付け、落とさないように持つ。


 ただ握って持つことが出来ず、親指と人差し指で鍵を持つように挟む。


「なにそれ?」


「さぁ? なんだろうな」


「まぁなんでもいいけどね。次は外さないから」


 ライカが再び構える。


 だが今までと少し様子が違う。


 ライカの身体を電気のようなものが音を立てて具現している。


「なんかヤバい感じだな」


 隼人が身構えたその刹那、ライカの姿が消える。


 今までとは比べ物にならない速度で間合いを詰める。


「…っ! はやっ…!」


 咄嗟に身体を仰け反り、直撃は逃れたが繰り出された拳が頬を掠める。


 大したダメージではないが、先ほどとは異なり掠めたと同時に身体が硬直する。


 不敵に笑うライカと目が合う隼人。


 次の瞬間、背中を勢いよく蹴り落され地面に叩きつけられる。


「がぁっ…!」


 一体何が起こったのか隼人は理解することが出来なかった。


「ほら、当たった」


「ぐっ…(身体のあちこちが痛い…! マジで死ぬっ! それになんだ? 身体が痺れて…)」


「身体が痺れて動けないでしょ。昔は障壁を張って魔力抵抗があったから、こうはならなかったけどね」


 どうやらライカの攻撃になにか仕掛けがあるようだ。


「手加減はしたつもりだから、もう動けるでしょ」


 腕で身体を押し上げながら少しずつ立ち上がる。


 痺れが弱まって来ているとはいえ、地面に叩きつけられたダメージが残っている。


「魔力が弱まっているからさすがに私が有利か…。そうだ魔王様、私からの提案」


「提案…?」


「このまま戦っても間違いなく私が勝つ。今の魔王様は全盛期に比べるとそこら辺りにいるオーガ程度の力。だから…」


 ライカは自分の頬を指差しながら言葉を続ける。


「もう一度私に攻撃を当てることが出来れば魔王様の勝ち。魔王様が立ち上がれなくなったら私の勝ち」


 悪くない条件。


 実際に一度攻撃を当てることが出来ている分、隼人にも勝機がある。


 ただ、ライカもそう簡単には攻撃に当たってはくれないだろう。


「一発で、いいんだな…?」


 取り出した小さい剣を手から外し首にかける。


 この状況、未知数の女神からもらった小さい剣のことを調べている場合じゃない。


「さっきみたいにはいかないと思うけどね」


「それじゃ、始めようか」


「その眼… いいね。ぞくぞくするよ」


 再びお互いに戦闘態勢にはいる。

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