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最終回です!

読んでいただけると、嬉しいです!

「ふぅ…」


始まってから2時間ほどが経ち、半分は綺麗になった。中々、骨が折れる仕事だ。

洗剤がきれ、歳月さんに予備を持ってきてもらっている間、1度手を止めた。


「あ…雨…」


大分、集中してやっていたからか俺は、雨が降っていることに今、気がついた。

窓に斜めに降ってくる雨がぶつかり、見た感じは結構、強く降ってるみたいだ。


「赤坂先輩、西階段に行って斎藤先輩達にも洗剤を渡そうとしたら、2人ともいなかったんですけど、知らないですか?」


「え?どこか別の場所に移動したのかな?」


「それが、道具は全部、置きっ放しで…」


おかしい。斎藤さんが仕事を途中で止めていなくなるなんて。それに2人とも同時にいなくなるということは、何かあったのかもしれない。


「歳月さん、2人を探そう」


俺たちは、途中で仕事を止め、2人を探すことにした。西階段は勿論、生徒会室や教室も探したが2人の姿はない。


「赤坂先輩!昇降口に行って、2人の靴を確認したら、斎藤先輩の下履きがありません!」


「え!?この雨のなか!?」


ますますおかしい。何故、外に行く必要がある?

降りしきる雨。暑い夏。まるで、2年前に両親を亡くした日みたいだ。


「…っ…」


何だが、すごく…嫌な予感がする。


「あぁ。斎藤先輩なら、もう戻ってきませんよ」


2人の後ろからいきなり声が聞こえ、振り返るとさっきまで探していた立花が、出てきた。


「どういうことだ…」


「斎藤先輩、俺の姉さんを殺した罪を償うため、死にいきましたよ」


「っ!!」


俺の姉さんを殺した?つまり、前に斎藤さんが話していた自殺に追い込んだクラスメイトとは、こいつの姉だったというのか。


「な、なに言ってるの立花君?」


状況についていけず、歳月さんはかなり戸惑っている。もし本当に、斎藤さんが死にに行って取り返しのつかない結末を迎えたら、俺は、立花を許さない。けど、こいつは姉を失った悲しみに囚われているだけ。責めたくはない。だからっ…!


「俺が、止める。必ず、斎藤さんを連れてくる!!」


今は、最悪な結末にならないようにひたすら走って、斎藤さんを止める!


上履きを履いたまま、俺は昇降口を飛び出し、行き先も分からないまま走り出す。

降りしきる雨。じんわりとした熱。2年前、1人で家に留守番していた俺のところに、叔父さんが声をあげていきなり、訪ねてきた。


「裕一郎!!お父さんとお母さんが事故に巻き込まれて病院に運ばれたそうだ!!急いで行くぞ!」


「え…?」


何が何だが分からないまま俺は叔父さんの車に乗り、病院へ向かった。

お願い…お願い…お願い!!お父さん!お母さん!無事でいて!!

だけど、俺の願いは届くことがなかった。病院に着いたとき、すでに2人は手遅れだった。

その後、事故を起こした奴に俺は泣き叫んで攻めたんだ。殴りかかって、殺したいと思った。さっきの立花は、2年前の俺に似ている。だから、余計に責められなかったんだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、あっ!!」


俺は濡れた路面に足を滑らせ転倒し、アスファルトの上に転がり込んだ。膝を擦りむき、体は泥水と雨水でビショビショだ。



例え、どんなに時間が経っても、悲しいことに変わりありません。


あぁ…そうだよ。斎藤さん。俺は本当は、今でも両親を亡くした日を思い出すと、ひどく辛い。だから、もう、こんな辛さは感じたくないんだ。


「どこに…っ」


ゆっくりと立ち上がると俺は、恐らくこの世のものではないものを見たんだ。



今では使われなくなった5階建ての雑居ビル。1つだけ壊れた扉から中に入ることが出来る。この屋上で、数年前、当時中学生だった遠藤美里が飛び降り自殺をした。


「…」


そこに斎藤はいた。降りしきる雨に濡れながら屋上から地面を見つめる。あと一歩、踏み出せば落ちてしまうところに立っている。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


柄の悪い友人と、ちょっとした時間潰しで、軽い気持ちだった。だけど、その時間は彼女にとっては地獄だったんだ。


「罪を償います…」


右足を一歩、ゆっくりと出そうとする。その瞬間だった。


「斎藤さんっ!!!」


「っ!」


荒々しい息が上がり、胸が痛い。いや、さっき転倒したせいであちこち痛いけど今は、そんなことどうでもいい。


「ど…どうして…?どうして来たんですか!?赤坂さんには関係ないことじゃないですか!」


いつもは声を上げない斎藤さんが、今日は酷く取り乱している。それほど追い込まれているんだ。


「言ったよね!例え、斎藤さんが突き放しても、俺はしつこく君のところに行くって!」


俺はゆっくりと、斎藤さんの近くに行く。けれど、斎藤さんはそれを許してはくれなかった。


「来ないでください!見ないでくださいっ!私が死ぬ瞬間なんて、貴方の記憶に残したくないんですっ」


泣き叫びながら体を震わせている斎藤さん。

俺は、斎藤さんの思い通りにはしてあげられない。死を望む彼女を、俺は見過ごせない。だけど…!他にしてあげられることはある。


「斎藤さん!!命を捨てても過去は変えられない!悲しむ人、後悔する人が増えるだけ!だったら、生きてよ!!君が泣いたら俺も泣く。怒ったら怒る。笑ったら笑う。喜んだら喜ぶ。斎藤さんが死んだら俺も死ぬ。俺が一緒に死ぬのが嫌なら、俺と一緒に生きてよ!俺を1人にしないでよ!!」


死ぬこと以外で君が望むことがあるなら、俺が何でもやる。だから、生きてほしい。


「赤坂さ…」


斎藤さんが、俺に話しかけようとしたその瞬間だった。突然、強い風に煽られ、斎藤さんはバランスを崩し、そして…そのまま落ちていく。


「斎藤さんっ!!!」


ビルから落ちる斎藤さんに俺は飛びつき、頭を手で覆い、ぎゅっと抱きしめる。せめて、俺がクッションになって彼女だけでも助かってほしい。今度こそ、今度こそ!俺の願いを叶えてほしい。


強い衝撃を待ち構えていたが、いつまでもその感覚はこない。その代わりにふらりと地面に触れた感触がした。


「…?」


ゆっくりと目を開けると、もう地面に俺たちの体は着いていた。


「あ…」


理由はすぐに分かった。きっと今、目の前にいる彼女のおかげだろう。髪の毛を2つ縛りにしている中学生の女の子。彼女は、体は透き通っていて、恐らくこの世のものではない。さっきも、この子が斎藤さんの場所を教えてくれた。


「…あ、れ?」


ぎゅっと目を瞑っていた斎藤さんが目を開け、周りを見渡す。そして彼女を見ると目を大きく見開いた。


「遠藤さん…」


そこにいるのは遠藤美里さん。数年前に、ここで自殺をした人。


「そっか…彼女が、遠藤美里さん…なんだね」


亡くなった遠藤美里さんが、斎藤さんを助けたということは…。


「遠藤さん、私、貴方には酷いことを沢山しました。だから、死をもって償おうとしたんです」


すると遠藤美里さんは、首を横に振った。


(私は、そんなこと望んでないよ。ずっと、見ていたよ。斎藤さんが、ずっと悔やんでたこと、他の人の助けをしていたこと。私はもう怒ってないよ。だから生きて…私の分も…)


透き通った手で、そっと涙で濡れた斎藤さんの頬を触る。遠藤さんは、斎藤さんを赦したのだ。そして、一瞬だけ俺のほうを見て小さく頷き消えていった。俺の勝手な考えだけど、彼女は最後、あとはお願いねと言ったような気がした。


「うっくっ!うあぁぁぁぁん!!」


その後、斎藤さんは、大きな声で泣き出した。ガクガクと震えた体を優しく抱きしめる。温かい。あぁ…ちゃんと斎藤さんは生きている。そう実感したとき、嬉しくて一緒に泣き続けた。


季節は過ぎ、俺たちは3年になった。

あの事件の後、立花は誰にも何も言わず転校し、2度と会うことはなかった。


「夢香!帰ろう〜」


「はい。今、行きますね」


俺たちは、あれから親睦をさらに深め、何とカ、カ、カップルになれた。

そして、生徒会の…俺たちの!熱心な活動なおかげで、イジメやカツアゲが大分減り、前は危険だから出来なかった文化祭を出来るまでになったのだ。


3年といえば受験だ。俺は勉強を斎藤さんに教えてもらいながら必死にやっている。

どうしても同じ大学に入りたいから。


今日も、いつもの図書館で勉強した俺たちは、2人揃って歩く。すると、突然、夢香が足を止めた。


「これから、もっと沢山、色んなことがあると思います。その時、裕一郎君は…一緒にいてくれますか?」


不安そうな顔をした夢香が俺の顔を見つめてくる。俺は夢香の両手をとり、指を絡ませ力強く握りしめて誓う。


「もちろん。誓うよ。ずっと一緒にいる」


ずっと君と一緒に生きていく。だから、君もどうか、この手を離さないでください。

最後まで、読んで下さった方ありがとうございました!

また、新作を投稿させていただこうと思っていますので、宜しくお願いします!

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