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3話です!

今回は斎藤さんの過去に触れます!

読んでいただけると嬉しいです。

「私、中学の時は荒れててイジメとか万引きとか平気でしていたんです。イジメは、段々とエスカレートしていって、クラスメイトを自殺に追い込んだんです。だから、私は…」


斎藤さんは、体を震わせながら俺に言う。その言葉に嘘も偽りもないのだろう。けれど…


「過去にどんなことがあっても、斎藤さんに代わりはないよ」


俺は斎藤さんと向かい合わせになり、そっと顔を覗き込む。斎藤さんの真っ直ぐな目が俺を見つめ、少し涙で潤んでいる瞳はキラッと夕日の光りに反射して輝いてる。


「あらら〜お取り込み中かな?」


突然、見知らぬ女性が俺たちに声をかけてきて、お互いびくりと体を跳ねさせた。

女性は、30代くらいで1つに縛った長い髪にスーツ姿で胸元にはバッチが付いている。


「お、お母さん。お帰りなさい」


「お、お母さん!?」


その人は何と、斎藤さんの母親だった。


「いや〜青春っていいね〜!お母さんも若返りたいわ!」


何だか、斎藤さんとは違ってユニークそうな方だ。その後、荷物を届け終わった俺は、帰ろうとすると、斎藤さんの母親に、夕飯を食べていかないかと熱心に誘われ、ありがたくいただくことにした。斎藤さんの家は、2階建てのアパートで2人で住んでいるそうだ。


「今日の夕飯は、カレーにしようと思うんですが、赤坂さんは、カレー好きですか?」


「す、好きです!」


私服姿にエプロンをした斎藤さんは、可愛さが増して直視出来ない。


「2人はあれかな?友達じゃなくて、恋人とかそういう関係なのかな?」


ニコニコというよりはニヤニヤしている斎藤さんの母親は、着替えを済ませ、聞いてくる。


「あ、いえ。同じ生徒会で活動はしていますが、そういう…関係ではないです」


ギクシャクしながら、俺は答える。只でさえ、初めての女の子の家にお邪魔して、しかもその女の子が気になっている子で、余計に緊張しているのに、母親まで出てきて、もう言葉に出来ないほど、ドキドキしている。


「あ、私のことは、千代ちよちゃんって呼んで〜その方が親近感が湧くでしょ?」


「は、はぁ。じゃあ、千代ちよちゃんで」


千代ちゃんから、他にも斎藤さんが普段、どんな学校生活を送っているのかとか、恋人はいないのかなど、色々聞かされた。むしろ、俺が斎藤について聞きたいのだが、千代ちゃんは話す暇を与えない。


「お待たせしました」


「あ、ありがとう。斎藤さん」


千代ちゃんの取り調べのように続いた会話は一旦停止し、斎藤さんが作ってくれたカレーライスが3人分、テーブルの上に置かれた。


「美味しそう!いただきます!」


初、女の子のお手製料理!もう、今年は幸せを使いきっていないか心配だ。

スプーンでカレーと白米をすくいあげて口に運ぶ。少しだけピリッとする辛さとまろやかさが混ざりあって、すごく美味しい!


「美味しい!斎藤さんは、料理も上手なんだね」


「お口に合うようで良かったです。多めに作ったので、たくさん食べてください」



皿を平らげた俺は、せめて後片付けはやらせてほしいとお願いし、斎藤さんの手伝いをしている。


「そういえば、赤坂さんの家に連絡しなくて大丈夫でしょうか?門限とか…」


「あ、大丈夫。俺、1人暮らしだから」


俺の家はここから電車で一駅走ったところにある。両親を中学生の時に亡くし、叔父と住んでいたけど、叔父は転勤でしばらく、海外に行っている。俺は英語話せないから無理!と叔父を説得し、今は1人で住んでいる。


「そう、だったんですが。ご両親を…」


斎藤さんは悲しい顔をした。どうして、自分のことじゃないのに。他人ごとなのに、そんなに悲しそうな顔をするんだろう。


「そんな悲しそうな顔しないで!もう2年前のことだから、悲しくないし」


困らせたくなくて、悲しませたくなくて、俺は軽そうにそう言う。


「例え、どんなに時間が経っても、悲しいことに変わりありません」


俺たちは、その後、途切れ途切れの会話をしながら皿を洗って拭いてしまった。


気を遣わせてしまったかな。話さなければ良かった。斎藤さんを困らせたくはなかったのに。



「あの、赤坂さん。少しいいですか?」



斎藤さんの家を出て千代ちゃんと別れ、俺たちは、近くの公園に来た。

明るい外灯の下にあるベンチに座り、ゆっくりと斎藤さんは口を開いた。


「さっきの、私が人を殺したという話は本当なんです。私は、クラスの女子を自殺に追い込み、そのご家族が泣き叫ぶ姿を見ました。それから私は、生みの母に捨てられ…今の千代さんに拾われて、新しい名前をつけてもらいました。けれど、どんなに新しい生活をしても名前を変えても罪は変わらない。私は…誰かと仲良くして、幸せな生活を望んでいないんです。だから、ごめんなさい。赤坂さんとはこれ以上、仲良くする気はないんです」


斎藤さんが、どうしてこの学校に入ったのか分かった気がした。勿論、訳あり生徒というのもあるけれど、人を助けることで、少しでも過去の償いをしたかったんだ。そして、何故、俺の家族を亡くしたと聞いた時、悲しそうにしたのは、人の死に苦しみ、悲しむ人をみたからだ。


「斎藤さん。もう遅いよ。俺は、例え斎藤さんが俺のことを突き放しても、俺は斎藤さんと仲良くなりたいから!しつこく、君のとこに行く!」


俺は、きっと初めて斎藤さんに出会った時に一目惚れしたんだろうな。強くて、綺麗で輝いているあの姿をもう、忘れることはない。



「赤坂さんは、初めから思っていましたが、面白い方ですね」


「っ!!」


少しだけ、本当に少しだけ、斎藤さんはその時、優しく微笑んだんだ。


夏休みが始まった。毎日、遊びたいところだが、夏休みも生徒会の活動はある。

校舎や廊下にかかれた落書きを生徒がいないこの時期に一気に掃除をしないといけない。


「あ…暑い…」


ジリジリと上からは太陽の熱。下からは地面の熱が体に襲いかかり、溶けてしまいそうだ。まぁ、斎藤さんに会えるからいいけど。


「じゃあ、私と立花さんが西階段の清掃で、赤坂さんと歳月さんが東階段の方をお願いします」


残念ながら、俺は斎藤さんとは別になった。あみだくじで決まったことだから、こればかりは仕方がない。


「赤坂先輩、宜しくお願いします」


「よろしくね〜」


歳月さんは、初めの頃よりも、人に慣れたのかハキハキ話すようになった。

俺たちは、雑巾とバケツ、洗剤を持って、東階段へ行く。


「うぉ…」


階段にかかれた落書きは、結構、細かく書かれていて落書きというよりアートに近い。


「この才能を違うところに使えればいいのになぁ〜」


階段に、洗剤をつけ、力強く階段を擦っていく。書いてから時間が経っているせいか、簡単には落ちない。



その頃、斎藤さんと立花に事件があったことを俺は知らなかった。


「じゃあ、立花さん。こっちのほうをお願いします」


「はい!そういえば、斎藤先輩ってどうして、この学校に入ったんですか?頭が良いのに」


不意に立花が聞いてきた。斎藤は、少しだけ間をおいて、ゆっくりと話した。


「…償いをするために入ったんです」


「償い?それって…遠藤美里えんどうみさとを殺した罪ですか?」


「っ!!」


さっきまで、ニコニコしていた立花から笑顔は消え、それは、ひどく怖い顔だった。


「図星ですか。こんな、学校でちょっと良いことをしたくらいで償いだなんて、笑わせないでくださいよ」


一歩、一歩と立花は、斎藤に近づいてくる。斎藤は、その足が自分のもとへ近づくたび、呼吸は荒くなり、心臓の音は速くなっていく。


「あ…あっ…」


立花は、斎藤の目の前で立ち止まり、鋭い目で斎藤を見る。


「俺は幼い頃に両親が離婚して、たった1人の姉さんに久しぶりに再会した時には、もう冷たくなっていた。あの憎しみも悲しみも俺は忘れない。なのに先輩はっ!名前も見た目も変えて生まれ変わったみたいに平気で生きて!償いとかふざけんなよ!!どうして姉さんがっ!あんたが!先輩が死ねば良かったんだ!!」


立花は、斎藤が自殺に追い込んだ遠藤美里の弟だったのだ。いつもは優しく笑う立花の瞳は怒りと悲しみの色をしている。立花が言ったその言葉は、深く鋭く斎藤の胸に突き刺さった。


「そう…ですね…」


斎藤は、その言葉を残して消えていくようにいなくなった。

読んでいただきありがとうございます!

次回で最終回です。

次も宜しくお願いします!

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