彼等の追う事件-信
今より約30年前、とある小説が話題を呼んだ。
世のオタクと呼ばれる人種、
つまり我々ははその実現を目指し、
ついにはその現物を模造することに成功した。
我々は今、その世界にいるであろう。
我々を追うのは簡単だ。
そのディスクを、パソコンで起動するといい。
〜〜〜〜〜
「どうでしょう、先輩。本当にこんな所にヒントがあるんでしょうか?」
古澤瑞希が愚痴をこぼす。
「分からない。だが、調べるしかないだろう。《Encode Disc》の実態は未だに掴めていないんだからな。今は小さな欠片でも情報が欲しい。」
「しっかしですねぇ?僕はまだ《Encode Disc》については信じてないんですよ。だって人を違う世界に移すことのできるディスクなんてあるわけないじゃあないですか。」
「それでも実際に犠牲者がいるんだ。俺の娘も。な。」
途端に古澤の顔が曇る。
「まぁ就職率の低い今どき?こんな事件追って新聞記者辞めるなんて僕とどこぞの美島信二先輩ぐらいですけどねぇ。」
ああイライラする。こいつの悪い癖はこういう所だ。普段は役に立つ後輩なんだがなぁ。
「なにもねぇな。やっぱり研究資材は持ち出されてた、か。」
今、私の娘は、雅はどこでなにをしているのだろうか。辛い思いはしていないだろうか。どこか遠い所にいる娘に語りかける。
「届くといいっすね。雅ちゃんに。」
くそっ。こいつちょくちょくそれっぽいこと言いやがってムカつく。取り敢えず軽く殴っておいた。
「った。なんすかぁ。」
「何となくだ。あとあいつはもう15だ。幼く見てると帰ってきた時痛い目みるぞ。」
そうだ。丁度一昨日15になったのだ。どこかで、15歳の誕生日を迎えたんだ。俺も、雅に会ったら祝ってやる。遅いって怒られるかも知れないが、知ったことか。頭撫でくりまわしてやる。
「ドタコン。」
生意気な後輩をひっぱたいておいた。
ドタコン とはDaughter Complex(スペル合ってるかは知らん)。つまり、娘大好きなお父さんです。