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初めまして! 神代鈴と申します。
この夏で長編(長さ的には中編?)を書きたいと思い、投稿させて頂きました。とある内気な高校生と明るい少女の青春を描くものになってます。読んで下さる皆さんに、夏っていいなぁ、と感じて頂けるような作品になるように頑張ります! 一つの映画を見るような感覚で読んで頂ければ幸いです。
誤字・脱字があれば、指摘して頂けると助かります。評価・感想などもお待ちしております。
「ふぅ……」
満は、イーゼルから手に持った筆の先を離すと、その腕で、額の汗をぬぐった。
新潟市柳島町。日本海から伸びる信濃川の河口付近に沿った歩道の終点にある広場で、満は、夏の展覧会に出品する絵を描いていた。
まだ七月の中旬であるというのに、体感する暑さは八月であると錯覚させるほどであり、午後の日差しが、体中の水分を蒸発させてしまうかのように、背中から照り付けていた。
満は、パレットと筆をおくと、首元をパタパタとさせながら、港から扇状に広がる海を見つめた。水平線の彼方からは、蜃気楼のようにぼんやりとしている、船の影が見える。
「っだーれだ!」
突然視界が見えなくなり、柔らかい何かで目を塞がれた感触に、肌が気が付くと同時に、聞きなれた飾り気のない声が、頭の上から襲って来た。
「ヒナタだろ」
満は、ヒナタの白い手を振り払い、振り返ると、金髪のその少女は、にかっと、無邪気な笑顔を見せた。
「当ったりー!」
ヒナタは右手にビニール袋に入った何かを抱えながら、空いた左手を、満の右肩に軽く乗せた。
「また、絵を描いてたの?」
ヒナタが覗き込むように満の首横から、絵を見て言う。
「八月に出品しようと思って。ほら、美術部だからさ。」
「ふーん、凄い涼しそーな絵だね!」
ヒナタは感想を率直に言うと、手に持っていた、ビニール袋から緑色の紙袋を取り出し、満に差し出した。
「ぽっぽ焼きだよー、はい!」
ヒナタは、袋を破り開け、一本を口に挟むと、袋の開け口を満に向けた。焼き立てのパンのような、芳ばしい匂いが広がる。
「ありがとう」
満は一本手に取り、それを、口へ運ぶと、ヒナタももう一本取り出し、美味しそうにパクついた。




