イノシシ編 閑話その9 ミレイ3
ぼーっと休憩所を眺めている。
休憩所では冒険者で埋まっている。ゲートから帰ってきてギルドで報告してから来ているのが殆どだ。
今日の冒険についてだとか、ドロップアイテムが取れたとか、とにかくガヤガヤと騒がしい。
女性の冒険者が珍しいのかこちらをチラチラ見てきたりする人も多い。
この目線が嫌で私たちは普段はあまり休憩所には来ないのだけれども、今日はわざわざ移動してまで打ち上げをしたいとは思えなかったのでゲートの近くにある休憩所にいる。
ふと、一人で静かに食事をしている人が壁のメニューでも見ているのだろうかこちらに顔を向けた。
私を見て一瞬だけど目が泳いだ。一瞬だけ目が泳いだ後は平然と壁のメニューを確認し普通に食事をしている。
なんとなく違和感を感じたので鑑定スキルで見てみた。
最近は習慣になっていたし、なんとなく見てみた。
名前は・・・
「江崎 拳」
まさか!
ステータスは、前に見た時より下がっているけど、体力・力・防御が高くて魔力が極端に無い。
見つけた!?
「ミレイ聞いてる?」
少し不機嫌になったアツコに声を掛けられてびっくりしてしまった。
「あっごめん、なんの話だっけ?」
少し怒られらつつも、早く向かいたい気持ちを抑えつつ相づちをうつ。
そろそろ帰るという事で会計を済まそうというところだったようだ。
その数秒だけの話でさえ長く感じた。
あの人のいた席を見る。まだいる。
ちょっとお手洗いと言って席を外す。(もちろん建前。)
あの人に近づいて声を掛けた。
すっとあの人の前に立ち話しかけた。
まさかとぼけられると思わなかったけど、本名をいったら顔から汗を出してシドロモドロしはじめて少し面白かった。
アツコも後からついてきていたようで、無理やり親戚という事にしておいた。
押し切った。
私も本気を出せばここまで押し切れるのだと初めて知った。
初めて素顔を見たが、私には普通の年上の男の人のように見えた。
ちょっと目付きが鋭いぐらいで、どこにでもいそうな人。
ここで長話してもと思い、思い切って電話番号を書いた紙を渡した。
少しドキドキして無理やりだったけれど、冷静に渡せたと思う。多分・・・。
その他とは、友達のところに戻り、みんなと一緒に帰宅したのだった。
でも、後から考えると恥ずかしくてその日はベットの上でゴロゴロしながら眠りについた。
電話かかってくるかな・・・。
UP遅れて申し訳ありません。仕事が忙しく・・・。
これからもご声援のほどよろしくお願いいたします。




