イノシシ編 第28階層
ここ最近は俗世間の情報が全く入っていなかった、
というか見たくなかったので入れなかった為、浦島たろうさん状態になっていた。
帰り道に新聞を買って読んでみたら、冒険者という職業に対して特殊な法案がここ数日で決まったらしい。
ダンジョンに住み込みだとTVもろくに見てなかったからな・・・。
新聞をきちんと見ておけばよかった。
さて、武器が出来上がるまで暇なので、少しはダンジョンから離れ久々に市街にでも出掛けるかな。
と言っても、最近読んでいなかった週間なんちゃらの漫画が気になったので電車に乗って少し離れたマンガ喫茶に行くことにした。
とりあえずはネットやTVでニュースを見て俗世間の情報を集めて、
数分後には漫画を見たり、映画を見て怠惰に一日を過ごして終わってしまった。
俺は一体何をしに市街まで来たのだろうか・・・。
せっかくだからやはり、あの店に行くしかない。
昨日は、目の前で入店拒否されていた男を見て入店さえしていなかったが、言わなければ入れるんじゃないかと期待して突撃してみた。
バレなきゃ良いんだ。バレなければ・・・。
「冒険者の方は入店をお断りしております。申し訳ありませんがお引き取りください。」
すいません、甘い考えでした。
くっ、まさか冒険者の入店直後にすぐに追い出されるとは、なんでわかったんだ・・・。
しぶしぶ帰りに酒でも飲んで現実逃避でもしようか・・・。
歓楽街の近くなの焼き鳥の匂いに連れられてか分からないが賑わっている焼き鳥屋に行ってみることにした。
一人で入り口近くのカウンターでぼーっとTVを眺めながらつまみと酒をちびちびやっていると、ガラガラと入口が開いたので無意識に見てしまうと。
まさか昨日の若い男と出会った。
「あ・・・」
相手もこちらを見てしまい、目が合ってしまった。
しかも賑わっているせいか席もあまり空いていない、気が利く店員さんがわざわざ俺の隣に座らせるもんだからなんとも言えない雰囲気になってしまった。
別に知り合いではないんだが・・・。
「どうも」
ととりあえず、軽く会釈をする。
サラリーマンの癖みたいなもんか。
無言会釈を返してくれたが、なんとも言えない雰囲気のまま若い男が奥の方のテーブルに向っていった。
予約でもしていたのかな・・・。
数分後に若い男と同じような年ごろの男が数人入ってきた。
同じ冒険者だろうか、偉そうな感じで店員に接している。
ちらちらとこちらを見てこそこそ話をしている。
店内が騒がしい上に遠いため何を話しているかは分からんが、気が付いてないアピールをしつつ腹を満たしてから帰宅することにした。
やきとりはやっぱり塩だな・・・、タレも捨てがたいが少しくどいしな。
部位としては、基本はモモか、いや手羽もすてがたいな、あえてつくねかなんこつもつまみとしては旨いしな・・・。
はっかんむりは食べてなかった!
と、ふと思いついた瞬間、後頭部に衝撃と激痛が襲った。
何が何だかわからんが、体の力が抜けてそのまま道路に倒れこんだ。
うぅ・・・、いてぇ・・・。親父にもさすがに後頭部を殴られたことないのに。
朦朧とした意識で冷たいアスファルトにディープなキスをしながらも体を起こそうにも力が入らん。しかも、額から生暖かいものが流れている。
多分血だろうな・・・。意識はあるが体が動かんな。
ヤバいよヤバいよ、マジでヤバいよ。
冗談言っている場合じゃないんだけどな・・・。




