ウサギ編 第6階層
翌朝、少し早く起きてしまった。
遠足前の小学生みたいな事だが、男はいつまでもそんなものだろうと自己完結した。
と、二度寝するのも勿体無いので、
朝の日本庭園でも見て美的センスでも磨こうかなと思い外へ向った。
すると、自衛隊のような迷彩服を着た人がダンジョンに入るのが見えた。
ん?
1ヶ月は俺専用じゃなかったのか?
戦闘服を着た奴は誰なんだろうか?もしかしたら前任者か・・・。
とりあえず、朝食を済ましてからリンさんに聞いてみようかな。
ってそんな簡単に流して良い事でもないか。
少し考えてみる。
そもそもリンさんは「入らなくて良い」とは言った。「入るな」とは言っていない。
なら、別にダンジョンに入っても問題ないな。
先輩冒険者の戦闘でも見学してみるかな。
直ぐにダンジョンに入ってしまうと、ストーキング追ってきたことがバレてしまうので、
少し間を置いてからダンジョンに入った。
入ってみたは良いが、何処で戦闘をしているのか目視では全く分からない。
結構距離が開いてしまったようだ。
仕方が無いので、モンスターの残骸を目印に探すことにした。
30分もしない内にモンスターの残骸を見つけたのでその方向へ進むことにした。
小高い丘を越えた辺りで周囲を見渡すと、
迷彩服の奴がウサギさんを燃やしていた。
その数百メートル先に、杵を持ったウサギ、月兎が見えた。
1人と一匹との距離はまだあるようで、
俺としてはまだまだ戦闘は始まらないと思っていたが、
迷彩服の手から月兎に向って火の玉が勢いよく発射された。
火の玉のスピードは結構速いように見えるが、月兎は軽々と避けている。
まったく当たる様子がない。
というか月兎の動きはかなり早い、目で追うだけでも精一杯だ。
実際、迷彩服は10発ほど火の玉を放っているが、一度も当っていないし掠ってもいないようだ。
どんどん、距離を詰める月兎、
次に奴は火の玉ではなく、火の線を放った。
2発目でようやく確認できたが、線に見えたものは矢だったようだ。
月兎に直撃はしなかったが、流石に避けるのも難しいようだ。
全てを避けれている訳ではなく、何発かは掠ったようで白い毛を一部黒くしている。
流石、前任者といったところか、
まだまだ、戦闘は始まったばかりだ。すでに俺は手に汗握る攻防から目が離せない。




