研修編 第15階層
「では、へんた・・33番さん、この度は卒業おめでとうございます。
本日から正式に冒険者として歓迎いたします。
今後は、配属されたダンジョンに向かい個々説明を受けてください。」
やばい、既にダンジョン運営側では「へんたい」が定着しつつあったのか・・。
なぜこんなにも「スキルへんたい」の存在が噂になっている。
スキルが分かって一週間も経っていないのに。
誰だ、バラした奴は!見つけ出して蝋人形にしてやろうか~。
と、受付で事務処理を待っていると。
「へんたいさーん、へんたいさーん、こんにちは。」
なぜだ、巫女の幼女は俺を「へんたい」と呼びながら近寄ってくる。
その後ろで狐面の巫女が追いかけてくる。
「だめです、巫女様あんなモノに近寄っては!」
そしてそのまま、狐面の巫女に抱っこされながら去っていった。
この一週間、こんなパターンを毎日見ている。
やっぱりこいつか!こいつらのせいで噂が広まっているのか!
しかもドサクサに紛れて俺をモノと言いやだったぞ、あの女狐が・・・。
こうなっては、もうこのダンジョンに長居は出来ない。
善は急げと冒険者として貯めてきた貯金を叩いてレベルを10まで上げた。
レベル6からだと大体13万円ほど使ってしまった・・。
しかし周りからあんな目で見られるぐらいなら、これぐらい安いものだ、
うぅ・・・、この一週間辛かった。思い出すだけで目頭が熱くなってくる。
受付でも、ダンジョンでも、休憩所でも、汚物を見るような目で俺を見ていた・・・。
俺には味方は誰もいなかったと理解した。
ふう、感傷に浸っている場合ではない、俺は今をもって卒業だ。
研修試験に合格後はレベルが10になれば研修生を卒業できるからな。
卒業さえしてしまえば、違うダンジョンへ行ける。
そこではまだ俺の噂も無いのだから問題ないはずだ。
その後、マサと会釈だけして苦笑いのヒカルと少し話をしていたら、急に受付に呼ばれた。
俺もすっかり忘れていたダンジョンアイテムの鑑定についての連絡だった。
奴から取ったアイテムの鑑定が終わったらしい。
国の買取りか自分で所持するか決めれるとの事で別室に向う。
「お久しぶりです。研修番号33番さん、じゃなくてへんたいさん。
先週預かっていたアイテムの鑑定が終わったので確認してください。」
一週間ぶりの頭の毛が薄い責任者はワザと言いなおしニヤニヤとした顔をしている。
そのニヤケ面を今すぐ泣き面に変えたいです。
自然と拳に力が入るが、ここは冷静に冷静に・・・。
「いえ、今日で卒業しましたので研修生ではありませんし、
へんたいではなく普通の冒険者です。(心の声:頭の毛全部毟り取ってやろうか?あぁ?)」
さてと、ニヤケ面した薄らハゲは置いといて鑑定結果は・・・。
蛮族のナタ
呪い無し
特殊効果:「必要:器用」が不要、「必要:力」が倍化、耐久力低下軽減
「耐久力低下軽減」は多分切れ味が落ちにくいってことだろう。
流石ダンジョンアイテムってところか、長く探索も出来るし最初にしては良い物な気がする。
この武器を扱うのに必要な「器用さ」のステータスが要らなくなり、
必要な「力」のステータスが増えたって事だな。
「まあ、研修者用のダンジョンで出たアイテムにしては良い品でしょう。
そこでどうされますか?売りますか?買取なら30万円ほどで買い取らせていただきますが。」
折角の初めてのダンジョンアイテムなので自分で使うことにした。
まあ、力のステータスはかなりあるし装備するには問題ないな・・。
「分かりました。
では、鑑定料で5万円になりますので口座から引いておきますね。」
おっと、鑑定はタダではないことを忘れていた・・・。
さらに懐が厳しくなるが仕方ないな。
次の配属されたダンジョンで稼ぐしかない。
ステータス
レベル:10
体力 :1000
魔力 :100
筋力 :770
丈夫さ :770
俊敏 :480
魔力 :10
持久力 :500
器用 :100
特性:露出
職業:無
スキル:無
装備
武器:蛮族のナタ
服:初心者上下セット
頭:無
胴体:無
腕:無
腰:無
足:無
靴:ナ○キのスニーカー
所持金
0円(次回からカウントはじめます。)
研修編はこれで終わります。この後、少し他の人目線で書きます。
今後ともよろしくお願いします。