ウシ編 第34階層
誤字脱字の訂正ありがとうございます。本当にありがとうございます。
改善・上達しなくて申し訳ないですが、今後ともよろしくお願いします。
はあ、俺って本当についてない、そう思いつつも訓練場中央へ向かう。
相手はやる気満々といった所か、なんなら殺意も混じっている。
肌を露出しているせいかそんな雰囲気を肌で感じる。
訓練なので特に中央に審判がいる訳でもない、皆遠目で見守っている感じだ。
まあ、普通の訓練だったら要らないかもしれないけど相手は殺す気満々だからなぁ。
直ぐにでも止められる場所には、いて欲しい・・。
そんな俺の気持ちなんてお構いなしにガイアが襲い掛かってくる。
最初の攻撃を難なく躱す。
何度か躱すと、なんだか相手も気合を入れなおしたのか動きが早くなった。
少し焦ったが、多少切られても俺の再生速度の方が早いのでまだ大丈夫だ。
ただ、それでも切られたら痛い。すぐに傷が塞がるといっても多少は血も出る。
血が流れれば体力も落ちてくる。
戦士職だけあって相手の体力も多い、結構な時間攻め続けてくる。
何分経過したか分からないが、30分以上は経過しただろうか、ようやく相手も息が上がってき始めた。
なにやら休憩しつつも隙を狙っているのだろうか、挑発してきた。
「俺ばっかり攻めて悪いから、お前も攻めたらどうだ?ほら来いよ!?」
カウンターを狙っているのだろうか、まあ確実に何か狙っている感じだ。
でも、俺にも多少の意地がある。
このまま一方的にやられっぱなしも気に食わない。
その安い挑発に乗って一気に間合いを詰め、拳を振り抜く。
ゆっくりと俺の拳がアイツに向かう。
スローモーションに見えるのは私が集中しているせいか・・・。
いや、ゆっくりと私の腰巻が無いのに気が付く。
構わず拳を振り抜く。
拳の軌道がガイアの顎に向かう。
不意にガイアの動きが速くなる。
ガイアの顎が軌道から逸れ、斧が私の首に向かってきた。
マズイ・・。
なんでこうなる。スキルを使ったのだろう、ガイアの動きが格段に速くなっている。
運命なのか・・・、俺には運が無いのか・・・。
そういえば、俺は運が悪かったっけな。。ふと走馬灯のように記憶が頭に駆け巡る。
昔からそうだった。
普通の家庭で育っていた。でも気が付いたら一人になっていた。両親も俺が高校生の時に不慮の事故で亡くなってしまった。
まあ、今思えば一般的な普通の良い両親だった。
その後は葬式やら手続きやらで、両親が残してくれたお金も親戚に取られたけど、残ったお金とバイトで大学を卒業して、その後は三流企業で普通に働いていた。
そこでも責任を擦り付けられたり、手柄を取られたりと色々あったなぁ。
真面目にやっていても人生は報われないと思いつつも、真面目に働くしかできなかった。
冒険者になってもバタバタした毎日だった。
決して楽ではなかったけど、俺の人生の中で一番必死になっていたかもしれない。
必死かぁ・・・。
首に斧が食い込むのを感じる。
拳の軌道もガイアの顎から完全に外れている。
関節が外れる嫌な感覚が頭を巡る。
腕の関節が外れガイアの顎に向かう。
首の関節がボキボキと外れ、頭を大きく反らす。
切り裂かれる首、拳にガイアの顎を粉砕した感覚が巡る。
そして、俺は自分の血しぶきを見ながら意識を手放した。
渡部目線
いつもの普通の模擬戦になるはずだったのに・・・。
殺しにかかるアメリカチームの戦士。
懸命に避ける江崎。
最後までは良い戦闘訓練にも見える。
特に問題が起きそうになかったが、アメリカチームの戦士がどさくさに紛れてアイテムを使った後から殺し合いになった。
ステータスを向上させたのだろう、二段階程度か急に速度が上がったように見える。
そのお陰で斧が江崎の首元を完全にとらえていた。
止めようと動きだすが、間に合わない。
このままでは江崎の首が吹き飛んで、即死だ。
そう思った。
でも実際は違った。
まさか、自分の筋力だけで首の骨まで外して即死を免れるなんて・・・。
挙句のはてには、腕の関節も外して攻撃を当てた。
人というよりかは獣に近い、というかバケモノ染みた動きだった。
それでも首が半分は切断され、致命傷を負って倒れた。
血が噴き出している。
私よりも早くに動いたのはアメリカの攻略チームの隊長のジェシカだった。
気道を確保しつつも止血をして、すぐに救護班を呼び回復させていた。
同じ国の戦士には目もくれずに・・・、なんと言って良いやら。
その対応もあってか、江崎は出血多量で倒れつつも翌日には目を覚まして普通に食事が出来る程度まで回復していた。
ただ、今回の一件を上層部が問題視したようで、江崎は即時帰国になった。
もちろんそれに合わせて私も帰国することになった。
帰国後の報告には悩まされるが、部下を全員日本に帰す事が出来る。その事だけは安堵できた。
本当に今回の任務は色々な意味で大変だった・・。
ただ、なぜか江崎の隣にはジェシカがいて、中国チーム二人が一緒になっての帰国となった。
何度も死ぬような目にあっているのに、今は幸せそうな顔で帰国する江崎の顔に呆れるしかなかった・・・。
此奴は自分に妻子がいる事を忘れているのだろうか。