ウシ編 20階層
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「一つ壊れてしまったけど、まあ新しいのも手に入ったから良いかな。よしとりあえず全部死体にしてから人形にするから、次はあっちだね。」
チャイナドレスの女はニタニタと気味の悪い笑顔をして渡部と花山へと足を進める。
棍棒使いは主の命令に従おうと棍棒を抜こうとする。
しかし、棍棒が抜けない。
力を込めて引き抜こうとすると、急にするりと棍棒が抜けた。
見ると江崎の身体から抜けたのではなく、棍棒の江崎にめり込んだ部分から先が無くなっていた。
短くなった棍棒、なぜ?そんな疑問が浮かぶ、既に死んでいるとは言え主の命令どおり渡部と花山の方へと足を向ける。
しかし、後ろで嫌な気配がした。
なんとなく生前の勘ともいえるものが働き、顔を江崎の方へ向ける。
既に死んでいるはずの江崎の身体からはゆっくりと蒸気が立ち昇る。
棍棒使いの男は、足を止め急いで反撃しようと身体を捻るが、視界いっぱいに広がる巨大な拳が最後に見た光景となった。
棍棒使いも顔面を破壊され、膝から崩れ落ち動かなくなった。
そこには身体に幾何学模様が浮き出た江崎が立っていた。
「早くしないか!あれっ?なんで生きてるの心臓を突かれたはずなのに・・・。まあ、良いか私の大事な人形を壊したんだから楽に死ねると思わない事だね。」
チャイナドレスの女は戦闘態勢にはいったのか、
両手には札持ち何やら呪文を唱える。
手から札をばら撒くと、札が江崎の周囲を囲む。
ぼそりと女が何かをつぶやくと、札が爆発、江崎は爆風に包まれた。
そして、また札を取り出し呪文を唱え今度は地面へ放り投げる。
そして、また何かつぶやく。
地面からは剣・槍を持った武装した人形が札の枚数分出現した。その数、10体以上。
爆発後、土煙が立ち込める中武装した人形全員が土煙の中にいるであろう江崎に向け突っ込む。
静寂そして怒号
煙と元土人形だった土の破片は吹き飛び、その中心には江崎が立っていた。
私は、腹から心臓を刺されたはずだが、毒手による痺れも何も今は無い。
痛みは微かに残っているが血も既に止まっている。
ふと周囲に空中に浮く札を見ると突然爆発した。
驚き痛みが全身を襲う、しかしダメージはない。焼けた肌が瞬時に再生する。そして収まらない爆風によってまた体中が傷つきまた再生を繰り返す。
痛みだけが身体に残る。
爆風が収まったと思ったら土人形が私に向かって襲い掛かってくる。
数は多いが、速度も攻撃のキレも先ほど戦った奴らよりも劣る。
拳に力を込め一発で10体の人形を撃破する。
遅いし脆いな・・・、こんな敵何体いようがまったく相手にならない。
私の拳で土煙が去る。そしてその向こうにはチャイナドレスの女がニタニタと立っているのが見える。
私はここで立ち止まっている場合ではない。
倒すべき敵に向かって駆ける。
札が襲い掛かり、爆発を起こす。ただその攻撃は何度も見た。移動する速度を落とさずそのまま突っ込む。
何度か爆発による攻撃を受けたが、秒もかからず全身が回復した。
チャイナドレスの女の顔が見える、私の攻撃範囲までたどり着いた。それでも女の余裕の表情は変わらなかった。
「なんと面白い男だ。変態な上に強いとは。興味深くて残念ですが、ここで死んでもらいましょう。」
そして1枚の札を地面に落とす。
その札に先ほど倒した武闘家の死体と棍棒使いの死体が集まってくる。
「此奴は醜いから使いたくなかったのだけれども、仕方ない。あなたも死体となって私に尽くしてくださらない?」
妖艶な笑みを浮かべおぞましい事を平然と言うこの女には驚かされる。
「素敵な女性の頼みだが了承できないな。私には守るべき人達がいる。」
「あら残念、まあ良いわどっちにしてもここで死んでもらわないとね。」
そう女が言い終えた途端、集まった肉は人型になった。私よりも一回り大きく邪悪な雰囲気を放つ肉塊は目鼻も口もない顔をこちらに向けてくる。
酷いな・・・。
直ぐに成仏させてやる。邪悪というよりかは、悲しいとさえ感じてしまう。死して尚解放されず、またすぐに利用され、バラバラになってもまた再利用されてしまう・・・。
慈悲の心を持って今すぐ成仏させてやろう。
巨体に似合わず速度が速い!私との間合いをひと呼吸で詰めてきた。
振り下される拳を避けガラ空きの胴体に拳を打ち込む。
胴体には風穴があいたが、動きは変わらず反対の腕で反撃してくる。死体で作られているのでそもそも痛覚がないし、弱点もないのだろう。
巨大な腕が振り下される。
私に触れる前に相手の拳を殴る。
そして、腕ごと吹き飛ばす。
吹き飛ばされた腕を気にすることなく、反対の手で捕もうとしてくる。
その手も殴って粉々に吹き飛ばす。
吹き飛んだ肉片がもぞもぞと再生しようと巨体に集まってくる。
なら、再生するよりも先に粉々にすればいいのだろう。
再生した箇所を殴る。再生する前に殴る。
少しずつ殴って削る。
ほぼ胴体だけとなった敵の胸部には、禍々しい札が埋め込まれていた。その札も殴って木っ端微塵にする。とうとう死体の合わさった敵は動かなくなり最後には灰となった。
女は呆れたような感心したようなそんな表情だった。
「これは困りましたね・・・。ここはひとまず・・・。」
また、札を取り出して呪文を呟き地面へと放った。
「今回は仕方ないけどダメみたいね・・・。それじゃあまたどこかで会いましょう。」
そう邪悪な笑顔を私に向けて、札から溢れ出る煙に包まれたチャイナドレスの女はどこかに消えてしまった。
なんか釈然としない終わり方だったが、渡部のおっさんと花山くんの方へと私は駆けだした。