ウシ編 第5階層
移動している間にも土煙と地響きがどんどんと大きくなっていている。
岩の前に花山さん、鬼軍曹と俺が陣取る。
岩の上にはリンさんと島野さんが陣取り、リンさんが魔法の準備を行う。
何かぶつぶつと呟きながらリンさんが両手を上げると両手から火の玉が揚がる。
両手から1mほど揚がったところで所でフワフワと漂っている。
その火の玉はどんどんと大きくなっていき、内側の炎が渦巻いていっている。
数秒もすると人1人は簡単に飲み込めそうなほど巨大な炎の玉になった。
「胸の大きさがそんなに重要かー!!!消し炭になれぇーー!」
土煙に向かっていく炎の玉、モンスターの群れに直撃して爆風を上げる。
爆風が土と熱を俺らまで運んでくる。
マジかかよ・・・。
なんて破壊力だ、ゾッとする。もうリンさんの胸を見るのは辞めておこう・・・。
ただ、その土煙からモンスターが飛び出してきた。
あんな魔法を食らっても群れ全てを倒す事は出来なかったようだ。
耐久力が凄いのか、魔法に耐性でもあるのだろうか。
どちらにしても残ったモンスターに注意を払う。
「左右から残ったモンスターが突っ込んでくる。花山は左、江崎は右だ!」
鬼軍曹からの指示に従って花山さんと二人で残ったモンスターの群れに突っ込む。
巨大な牛というか、自動車ほど大きな巨大なバッファローがこちらに突進してくる。
前のダンジョンで戦ったイノシシと同じような攻撃パターンのようだ。
モンスターは首を下げて大きな角を俺に向ける。
俺はタイミングを合わせて拳を振り下す。
ドガッ
鈍い音と共にモンスターの頭が地面にめり込み、その勢いを無理やりに止める。
拳から伝わってくる衝撃は今までの比ではないくらいに大きく骨に響く。
ただし、力を込めれなくなるほどではない。
ひと呼吸する、不思議とその痺れが和らいでくるように感じる。
装備のお陰なのかは今ははっきりとは分からないが助かる。
深く考える暇はないようで、次々と突っ込んでくるモンスター達。
直線的に突っ込むしかしてこないので、タイミングを合わせて殴る。
拳から血が滲み力が入らなくなる。
それならと足で蹴り上げ、角を砕き、頭蓋骨を木っ端みじんにする。
足もズタボロになるが、その頃には拳に力が入るようになったので、また拳でモンスターを玉砕していく。
その繰り返しで10体ほど倒した辺りでモンスターが居なくなった。
ふぅ・・・。
自分の手足を見ると、傷はほとんどなかった。
この装備は装備していると傷が治る速度が飛躍的に上がる効果もあるようだ。
花山さんの周辺にも何カ所か砂の山が出来ていた。
島野さんがサクッと一人で魔石を集め終わらせていた。
「ドロップアイテムはなかったが、なかなか良い動きだった。今日はダンジョンでの探索はお終いだ。帰還するぞっ!」
『サー!イエッサー!』
あれ・・・、気合いを入れすぎちゃったかな・・・。
というか、装備のお陰でここまで強くなったのか?思っていた以上の効果だ。
見た目さえ目を瞑ればこんなにも強くなれるものだろうか、ダンジョン関連の装備は不思議なものが多いなー。と、少し外れた感想を考えながら帰還する江崎。
その前では魔石を大量に拾えて目が金マークになって今にもスキップをしだしそうな島野。
早く休みたいとやる気のない事を言いつつ後ろに続く花山。
最後にすっきりした顔をした蓮池が足軽に歩いている。
冒険者ってのはこんなに個性は揃いなのか・・・。
頭の痛くなる「鬼軍曹」こと渡辺であった。
ダンジョンから帰還して、まだ少し早いが各自休憩となった。
女性陣は買い物をしたいのだろうか周辺の情報を得るために足早でに出かけていった。
一方、渡辺は先ほどのダンジョンから帰還して今部屋に戻ってきた。
装備を外して、自分の机に座りため息をつく。
先ほどの実戦での訓練から内心かなり動揺していたが少し冷静さを取り戻してきた。
島野と花山は概ね書類の情報通りの戦闘力だった。
蓮池の範囲殲滅型の協力な魔法、一日に数発は安定して撃てるほど大きな魔量保有者、勇者ほどではないが、かなり上位に入る実力者のようだ。少し情報を上方修正するぐらいでいいか
しかし、江崎か・・・、化け物か・・・。
石仮面から覗く邪悪なほど赤い瞳、素手でモンスターを粉砕する強靭な肉体。
どっちがモンスターなのか分からなくなる。
実際に、傍目から見たらモンスターと言われてもおかしくない風貌だしな・・・。
書類上のステータスと、実戦での動きの差が激しい、「露出」というギフトの影響なのだろうか・・・。
上層部へ事実を言った所で信じて貰えるとは思えんしな、なんと報告すべきだろうか・・・。
江崎を含めて他のメンバーは各々好きな時間を過ごす中、渡辺だけはその後、午後一日眉間にしわを寄せながら今日までの進捗報告の書類作成で終わるのであった。
引き続きよろしくお願い致します。