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脱サラリーマンの冒険記  作者: 団子 虫
第三章 イノシシ編
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ヘビ編 第6階層

疲れた・・・。

久々のダンジョンで、いきなり大多数と乱戦すると思わなかった。

今日は早く寝よう。


マスクのお陰で安全に冒険も出来たしな。


ゲートを潜りドロップアイテムを預け、更衣室で着替える。シャワー室も完備していればよかったんだが仕方ないか・・・。


更衣室から出ると見た事がある美女が目の前にいた。

ただ、その美女の顔は般若のごとく憎悪に満ちた顔だった。


俺は180度回転して速攻で逃げようとしたが、更衣室しかない。

一瞬だけ硬直した隙に後ろから肩を掴まれた。


肩に爪が食い込み、服と肉の擦れる音が聞こえる。


「お久しぶりですね、江崎 謙さん」


冷や汗が止まらない。なぜだろうあの時助けたはずなのに恨まれるような事はなかったはず・・・。全裸だったけど何もしていないはず・・・。抱きかかえたのがまずかったのか?

胸が小さいとか思っていたのがばれたのか?


色々な事が頭を駆け巡る。


「挨拶しているのに顔も見せずに返事をしないのは失礼ではないですか?」



振り向かなくても分かる。

冷たい声と後ろから感じる熱、暑い。冷や汗と暑さによる汗で俺の毛穴が混乱している。

多分、肩を掴んでいない方の手で何やら火炎魔法を準備しているのか・・・。



「お久しぶりです・・・、リンさん。」



とりあえず、一瞬で掴まれている手から逃げるため土下座をする。

そして頭を下げたまま挨拶をした。



「えぇ、きちんと挨拶すれば良いんですよ。この後少し時間ありますか?」

土下座の効果は抜群だったようだ。

とりあえず頭を下げたまま、肩の痛みを我慢しつつ、魔法を抑えて貰えて良かったと安堵した。


普通ならこんな美女にお誘いされたら嬉しいだろう。

しかし今は顔から憎悪しか感じないし、俺には般若にしか見えないこんな状況でもうれしい奴がいたら俺は尊敬する。



「はい・・・。もちろんです。」


弱弱しく返事をしてリンさんへ着いていくことしか俺にはできなかった。



明るめのレストランに連れてこられた俺。

このレストランへ向かう道中、リンさんの愚痴を延々と聞くことになった。



無言よりはマシだが、こんなに話す女性だったのか・・・。



はい、うん、そうですねと相づちをする。

結構な頻度ででてくる俺への愚痴を出来るだけ誤魔化そうとする事しか俺には出来なかった。


やっとの事でレストランへ着いた。

今攻略中のダンジョンから近く、稀にダンジョンで取れ食材も提供してくれるらしい。

料金は桁が違ってくるとの事だが、今日は残念ながら無いとの事でリンさんは少し残念そうだった。


正直、リンさんの愚痴でお腹いっぱいで早く帰りたいのだが、どうも今日は俺のおごりらしい。

かなりのドロップアイテムをギルドへ渡したが、即日入金される訳でもないので懐は未だに心配だ。


「最近、ここをよく利用しているですよ。味が良いし、ダンジョンから近いので。まあ、金額は高いですが払えない額ではないですからね。」


「羨ましいですね、元々普通のサラリーマンでしたし、冒険者になっても装備品で結構お金がかかるんでこんなレストランには来たことないです。」


「ほとんど全裸に近い姿なので装備にお金がかかるんですか?」


「・・・俺もそう思うんですが、マスクが高額で今日もギリギリの生活をしているんですよ。」


「へぇ、なるほどね。私は魔法が主体なのであまり装備は気にしないので分からないですね。近づかれる前に魔法で消し飛ばせば済むので。」


かなり過激な会話の最中でようやく料理が出始めてきた。

正直、フレンチなんで食べたことない料理が出され、おいしいのだが複雑過ぎて、一般市民でも最下層の俺の舌では表現に困るものばかりだった。


デザートも終わり、一息していると落ち着きを取り戻したリンさんが尋ねてききた。


「ところで拳さんはなんでこのダンジョンを攻略しているんですか?聖女様狙いですか?やっぱり胸が大きい方がいいんですか?」


目が怖いです。さっき取り戻したばかりの落ち着きは一瞬で亡くなった。

そして、ようやく治まった動悸と冷や汗がまた出てきた。


「いえいえ、そんなんじゃないですよ。依頼があってダンジョン攻略をしているです。そこは関係ないですよ。」


「そうですか?まあ、良いですが・・・。」


まだ納得していない疑いの目で俺をジロジロみている。

すると横からチャラい顔の男が割り込んできた。

「あれ、リンちゃんこんなところでどうしたの?」


心の中でレストランなんだから食べに来たんだろ。とつっこみを入れつつ顔を見る。

こいつ、俺に魔法打ち込んだり、モンスター擦り付けたりしたあの冒険者だった。


「食事です。」

「そんなツンツンしちゃって、これから俺と一緒に飲みにでも行かない?」

「もうお腹いっぱいなので遠慮します。」

「そうなんだ、じゃあ今度また一緒にダンジョンにでも行かない?」

「いえ、一人でも大丈夫です。」

冷たくあしらうリンさん。めげないチャラ男。


「こんな冴えないおっさんと食事しても時間の無駄だって・・・。」


「流石に初対面で少し失礼じゃないかな?」

「うるせえな、偉そうに説教してんじゃねえよ。って、おっさんもしかしてあの時の変態冒険者?生きてたんだ?」


俺の顔知らないはずなのになんでこのチャラ男は知っているんだ?


「モンスターの群れにやられたと思ったんだけど意外と強いんだね。その変態スキル。

俺はあんたとは違って職業も「勇者」だから鑑定も使えるんだよ。「引きこもり」のあんたとは違うんだよ。」


テンプレの如く目の前で俺の事を罵倒する人は初めてだ。

悔しいが事実だ。しかも勇者というレア中レアでしかも強い冒険者に言われたら、何言っても負け犬の遠吠えになるしな。


黙るしかない俺。静かになるレストラン。

リンさんは何か言いたそうだが、俺が顔を振って止める。


「お前みたいのが聖女ちゃんと婚約なんておかしいだろ。俺みたいな男が彼女には相応しいんだよ。まあ、今度ダンジョンで出会ったら、目障りだから消しちゃうかもしれないから気を付けてね。」


じゃあ、とリンさんに向かって手を振ってレストランから出ていく勇者。


「嫌な思いをさせてしまってごめんなさい。」

居たたまれない雰囲気になってしまったテーブルで謝るリンさん。


「いえ、リンさんはなんにも悪くないですし、本当の事ですから否定は出来ないですね。さてと、お腹もいっぱいになりましたので帰りますか。」



リンさんとは微妙な雰囲気でレストラン前で別れた。



俺は1人ホテルでも探しながら帰る。

ふと、目頭が熱くなるのを感じ夜空を見上げながら歩くのだった。


ブックマ・ポイントありがとうございます。

今後ともごひいきにお願いします。

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