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俺には〇〇が憑いている!?  作者: 読書最高(^o^)/
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不幸を幸福への結

起。


俺の名前は、光リエ(ヒカル・リエ)。女の名前だが、れっきとした男である。


「女の子が欲しかった!? 男の子が生まれたら、男の子の名前をつけやがれ! 小さい頃から、「リエちゃん? え!? 女の子と思った!」とか、好きな女の子に告白をしては、「私、女の子の名前の人とは付き合えません!」とか、そんなことばかりだ!? 俺の人生で楽しいことなんて、やって来ないんだ!」


と、思いつめ、学校の屋上から飛び降り自殺を図ったのだが、不幸な俺は死ぬことすら許されなかった。そんな俺の前に、レンタル福の神という、偉そうなでキチガイな女が現れ、不幸を幸福に変えるという。俺は、福の神に憑りつかれてしまった。福の神のおかげで、俺にも久野文香という彼女もできた。そして、俺の不幸との戦いが始まった。「貴様の不幸、私が頂こう。」あ~ん、パク、モグモグ、ゴックーン「おいしい!」「ほんとに食うな!」。俺の生死の不幸はおいしいらしい!?


承。


「行く! 行く! 行きたい!」


福の神の福ちゃんは、不幸の臭いを嗅ぎ付けた。


「行きたくない・・・。」


俺は、最初は乗り気だったが、福ちゃんの興奮した姿に、身の危険を感じた。


「行こう! 富士山登山!」

「ええ・・・。」

「なんで、嫌なんだよ?」

「だって、福ちゃんが乗り気っていうことは、俺にとてつもない不幸が訪れるってことだろう?」

「うんうん、そんなことないよ。」

「顔にウソだと書いていますが?」

「ハハハ、バレたか!」

「俺が富士山に登る。山から転げ落ちる、雪崩に巻き込まれる、そんな辺りの不幸に巻き込まれる可能性があるんですが?」

「大丈夫! そんなレベルの不幸は、私が頂いてやる! 安心しろ!」

「ま、まさか!? それ以上の不幸があるというのか!?」

「ないない。」

「怪しいな。」

「エヘヘ。」


俺は、福の神を信じていなかった。明らかに福ちゃんは、もっと大きな不幸を思い描いている。俺に、いったい何が起こるというのだ!?


転。


「富士山だ! きれいだな!」

「おいしそう! 不幸がいっぱいだ! よだれがジュルジュル!」

「おい! 喜ぶな!」

「よそ見をしていていいのか?」

「え!?」

「もう不幸は始まっている。」


ペチャっと頭に鳥の糞が落ちてきた。


「うわぁ!? 汚い!? 福ちゃん、俺の不幸を頂いてよ!」

「そんな安っぽい不幸は、まずそうだからいらない。」


俺には、不幸を呼び寄せるスキル、「リエの呪い。」を持っている。登山中も例外ではなかった。


「うわぁ!? 大きな岩が落ちてくる!?」

「落石? 知りません。」

「ギャアアアア!」


「うわぁ!? 大きな雪が流れてくる!?」

「雪崩? 見えません。」

「ギャアアアア!」


「うわぁ!? 大きなガジラがやっくる!?」

「大怪獣? そんなもの富士山にはいません。」

「ギャアアアア!」


俺の不幸を幸福に転換するはずの福の神は、俺の不幸を頂かなかった。俺は、修行に3年は行って、着替えをしていないようなボロボロでフラフラになっていた。


「福ちゃん! 俺の不幸を食べてよ!?」

「生きてるだろ? こんなものは不幸の中でも、カワイイ方さ。」

「こ、これ以上の不幸が、俺を待っているというのか!?」

「ピンポーン! 大正解!」

「マジか!?」

「ウッシシシ。」


俺は、耳を疑った。これ以上の不幸があるというのか!? 不敵に笑う福の神。今までの不幸を、なぜ食べなかったのか!?


結。


「私が頂く、貴様の不幸は・・・これだ!」


山頂に着いた俺を待っていたのは、火口で燃え滾っているマグマだった。


「マグマ!?」

「飛び込め。」

「え?」

「落ちろ。」

「ええ!?」

「間もなく、富士山が大爆発を起こす、大不幸がやってくる。しかし、貴様が落ちれば、富士山の大噴火から、周辺の数千万の人々を、不幸から守ることができる。みんなのために身を投げろ。」

「嫌だ。絶対に嫌だ。」

「はぁ・・・仕方がない。私も一緒に落ちてやろう。」

「福ちゃん・・・。」

「私は、貴様に憑りついてる福の神だ、貴様、一人だけを人柱にはしない。貴様が落ちる時は、私も一緒だ。」

「福ちゃん、本当は優しかったんだね。」

「当たり前だ、私は福の神だからな。」


俺と福ちゃんは手を握り、火口を神妙な顔で見下ろしている。


「行くよ、福ちゃん!」

「貴様、私の手を離すなよ!」

「絶対に離さない!」

「みんなを大不幸から守るためだ。」

「死ぬ時は一緒だよ!」

「早く飛べ。」

「え?」

「ゆくぞ! とお!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


福の神は、俺の手を離さずに火口にダイブした。その顔は楽しそうで、口からよだれが垂れていた。


「ウギャアアア!!!」


火山のマグマが、俺を目掛けて突進して来る。


「貴様の不幸、私が頂こう!」


福ちゃんは、俺からマグマで全身やけどと、富士山大噴火で周辺住民への大不幸が集約された、不幸の塊を手づかみで取り外した。


「大不幸のマグマシロップ付き、なんて、おいしそうなんだ!」


ア~ン、パク、モグモグ、ゴックン、プハー!


「おいしかった。」

「い、生きてる!? 俺は生きてるぞ!?」

「当たり前だ、貴様には私が憑りついているのだからな。」

「こ、これは!?」

「噴火寸前の活火山だった富士山のマグマは、貴様が大惨事の不幸を集め、私が、おいしく食べたことによって、灰色の死火山になったのだ。当分の間、富士山が大爆発を起こすことはないだろう。」

「やった! よかった!」

「噴火から多くの人達を守るためとはいえ、落石や雪崩から貴様を守ってやることができなかった。悪かった・・・。」

「いいよ、別に。みんなの幸せのために役に立てたのもうれしい。」

「そう言ってもらえると、ありがたい。」

「それよりも、福ちゃんが謝るのなんか、初めて聞いた気がする。」

「そりゃあ、私だって、たまには謝る。」

「なら、触ってもいい? ピタ。」

「こら! 調子に乗るな!」


これでも俺は幸せに暮らしている・・・たぶん。


つづく。

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