表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

たけちゃんとパセリじじい

 武道くんの家に行くと、家の前の菜園さいえんで武道くんと武道くんのおじいちゃんが座っていました。まだ武道くんは制服せいふくのままでした。


「かっちゃん、もう来たん? はや」


 武道くん――たけちゃんはかっちゃんを見るとおどろいて言いました。

 たけちゃんは関西かんさいから引っこしてきた子です。


「着がえてくるから、まっててや」


 たけちゃんは家の中に入って行きました。

 おじいちゃんは庭の菜園の野菜についている青虫を取っているところでした。


「今日も遊びに来てくれたんかいのう」


 おじいちゃんがかっちゃんを見て、かかか、と笑いました。おじいちゃんの顔はまっ黒で、生えているヒゲはまっ白でした。


「いいもんあげよ」


 そう言ったおじいちゃんに、またか、とかっちゃんはげんなりしました。


「ほい、口あけえ」


 ふり向いたおじいちゃんの手にはわっていたパセリをちぎったかたまりがありました。そして緑のかたまりをかっちゃんの口もとに近づけました。


「パセリはようさん栄養えいようがあるんやで。身体からだにええんや。毎日食べたらええねん」


 パセリじじい、とかっちゃんはおじいちゃんのことをこっそりと呼んでいました。いつも同じことを言って、かっちゃんにパセリをたべさせるのです。

 よくこんなまずいもの食べられるなあ、とかっちゃんは思いながら、おとなしく口をあけてパセリを食べるふりをしました。

 おじいちゃんが背中を向けた瞬間しゅんかん、かっちゃんはぺっ、とはき出して、落ちた地面に足でパセリをうめました。


「かっちゃん、お待たせ」


 家の中から着がえた、たけちゃんが出てきました。


「じゃあおじいちゃん、遊んでくるわ」


 たけちゃんは言うと、かっちゃんの手をつないで引っぱりました。


「まだあると思うねん。でっかいへびのかわや」

「缶の中に入れようと思って、もう持ってきたんだ 」


 かっちゃんはわきにかかえた黄色い缶をたけちゃんに見せました。


「へびのかわは財布さいふに入れたらええらしいで。金もちになれるんやて。じいちゃんの財布に入っとるで」

「おじいちゃん、お金もちなの?」

「宝くじはいつもうてるけど……っあっ!」


 たけちゃんがかっちゃんの後ろの方向を見て声をあげました。


「マミちゃんちゃうん? あれ」


 かっちゃんがふり向くと、どたどた、とした足どりでピンク色の服を着た小さな女の子がこっちに走ってくるのが見えました。


「こっちに来るな! 帰れ!」


 かっちゃんは叫ぶと、たけちゃんの手を取って走り出しました。


「早く行こう。ついてくる」

「ええの?」


 後ろでぎゃー、とマミが泣くのが聞こえました。

 かっちゃんは振り返らずに走りました。

 マミがついてくると足手まといで、ちっとも面白くありません。

 自分の姿が見えなくなったら勝手かってに家に帰るだろ、とかっちゃんは思いました。

 たけちゃんとかっちゃんは、田んぼの土手に向かって走りました。



 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ