作家志望心得。雰囲気重視シリアスのための「擬音語」。
R15としましたが、問題の箇所に入る前段に「※注意」と書いておきました。
それ以前の大半文章は大丈夫ですので、
どの年齢の方も安心してお読み下さい。
◆
アクションシーンを書いていると、作風次第で常にチラつく選択肢。
「この描写には擬音語を使うべきだろうか?」
きっと誰もが迷ったことがあるでしょう。
コミカルなノリの小説なら、割と気にせずに済むかも知れません。
問題はシリアスな場面における、擬音語の危なっかしさと制約の多さです。
銃撃に伴う様々な音。体と地形のぶつかる音。負傷に伴う音。金属同士の接触音。
風と空気の生む音。登場人物の息遣いや鼓動。
動きの激しさを演出する擬音語。
静寂を演出するための擬音語。
実在する音を描写する擬音語。
実在しない、例えば超能力的な特殊知覚や場の雰囲気を表す擬音語。
「使いどころを間違えたらシーンの雰囲気が台無しになるぞ」
「書き手と読み手で連想する音が多分違う」
「そもそも平仮名やカタカナで表現できる音には限度があるよね」
「擬音に頼ったという時点で評価が落ちる可能性すらある」
等々と悩んだ挙げ句、
「もう擬音語を使うこと自体が悪手なんだろうな、多分」
「擬音語が最適というケースも有るかも知れないけど、とりあえず避けた方が無難だろう」
という方針に落ち着く人は多いことでしょう。
結論ではなく、とりあえずの方針としてね。
かくいう私も今、このサイトで連載を始めて(http://ncode.syosetu.com/n7556cs/)、
とりあえず「回避できる限りは擬音を使わない」という方針を維持しています。
ただ、それでも自然と使いそうになることはちょくちょく有るので……
シリアスな小説で擬音語を使う際の、指針をもっています。
それは
「成功的な、肯定的な瞬間の描写には擬音語を使わない」
「あっけなさを演出するためなら、勝利や成功の描写にも使ってよい」
「失敗を描写するためならもっと気軽に使ってよい」というものです。
例を挙げましょう。
◆例1◆
「主人公が悪者との読み合いに勝って、ついに攻撃をクリーンヒットさせるときの効果音」なら?
マンガならもちろん盛大に擬音語を使うでしょう。
聖剣なら「ズバアアッ!」とか「シャキィィン!」とか「斬!!」でしょうか?
ビームなら・・・なんでしょうね? 「バシュゥゥゥッ!」かな?
さて、小説で同じ擬音語を使ってよいものか?
私なら使いません。
単純に、その擬音語で「攻撃の重さ・重要性・爽快感etc.」が読者に伝わるか怪しいためです。
というのも、まず擬音語を挟むという時点で
「それまでの日本語文の流れ・勢い」を区切ってしまうリスクが大きい訳ですが
書き手の望むモノを
読み手に伝えるために必要なものが、まさしくその流れ・勢いだと思うのです。
擬音語で「格好良さ」を表現しきることはかなり難しい。
読み手と書き手のテンションをシンクロさせることが大事です。
わざわざそこに一拍入れるリスクを冒してまで、ズバアアッ! とか入れる価値があるのか?
果たしてそれで格好良さを伝えきれますか?
◆例2◆
「主人公が完全に劣勢で、銃を撃っても外れてしまうというシーンの銃撃音」なら?
この場合、擬音語を使うハードルが著しく下がります。
「あっけなさ」「滑稽さ」を擬音語で描くことは、「格好良さを」を描くよりも
ずっと簡単ですからね。
銃撃や斬撃を格好良く描写しようとして、擬音語を使って、それがスベったら
読者さんはその擬音語表現から何を感じるでしょう?
ずばり「勢いの無さ」「失速・失敗感」「滑稽さ」だと思います。
「あっけなさを演出するためなら」可、としているのも、同じような理由です。
ちなみに昨晩私が書いた擬音語シーンはこんな感じです
※注意! 流血シーンなので人によっては受け付けない可能性があります!※
↓
◆
いつのまにか二股に分岐していた鞭が、最前衛で発砲していた警官二人の四肢をぶつ切りに分断した。首は刎ねない。断面が広すぎて今度は血の噴水も上がらない。骸の各部が二人分、無力に落ちて、バケツでもひっくり返したようなジャバジャバという音を立てた。
その落下と雨音に紛れて、敵も地に沈む。
アスファルトの地面から剥がれて鎌首を振った黒い「それ」は、再び地面にピッタリと貼り付いて、形を持たない二次元の存在に戻った。
その変化を見て、青年は思い至る。
地面の細かな凹凸・ひび割れに、綺麗に沿って同化した黒い絵。
(見たことがある……)似たものを。日常的に見知っている。索敵光に照らされた様など特に。
影。これは影だ。
物体を光で照らした時に、光源の反対側に現れる限定的な暗所。それが動いているのだ。ただし大元の「照らされる物体」が見当たらず、しかも影自体が殺人を行っている。
この影は地面を伝って、西から細長く伸びてきている――
「くっそ化け物、がアアアッ!」
野太い罵声と共に、大柄の警官が駆け寄って散弾銃を撃ち込んだ。
それまでのどの銃声よりも重い轟音が、ポンプアクションの駆動と交互に場を覆う。
カシャコ、ドウン! カシャコ、ドウン! カシャコ、ドウン!
老朽化したとはいえ平面を保っていたアスファルトが、発砲ごとに砕けて開く。
正確に狙われたはずの影絵は、発砲ごとに後退して短くなるだけ。かすりもしない。
◆
以上、コピペ終了。
この場合、ショットガンの銃声からは私が読み取って欲しいことは「無意味さ・虚しさ・徒労感」です。
重い音と認識されるように「!」を付けてありますが、
銃声の迫力が読み手に伝わらなくても構わない。
発砲が無為な徒労に終わっている雰囲気が伝わればよい、と考えてます。
他にも多分
「数秒以上、持続する音」には擬音を使ってもリスクが少ないとか
「瞬間の激しさを描写する擬音語」はリスクが大きいとか
他にも細かな相性要素があると思いますが……まあ主旨を書き終えたので、これぐらいで幕を引きます。
参考になれば幸い。
助言や反論をいただけるならもっと幸い。
さて小説本編の執筆に戻ろうか……
◆
読了ありがとうございました! 以下は連載小説の宣伝になります。
◆
神ヒト血鬼~ヒューマニズム・オブ・レスタト~
http://ncode.syosetu.com/n7556cs/
人類亡き後の地球。
吸血鬼たちは巨大な棺に包まれた都市「コフィン・シティ」の中で、
辛うじて文明を維持していた。
時を経て、もはや人類という言葉の意味すら変化した忘却の世界にて、
最後の人間「レスタト」が封印から目覚める。
対吸血鬼のあらゆる技術をインプットされたレスタトは、
生身の人間でありながら、
人対吸血鬼というかつての戦争を唯一人で再開しようとする……
これはきっと、失われたものの重さを問う物語。