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第2話:別れと出合い



ゴブリンを兵士さんに倒してもらい、町の中へなんとか到達したが、さっきの話や町の様子を見るに、どうやらこの世界では魔法が当然と存在し、子供でも使えるものらしい…。

花屋では手から水をだし、飯屋では火をおこすといった風に魔法が当たり前に飛び交っていた。

そしてさっきは慌てて気づかなかったが、こちらの世界でも言葉が通じるらしく少し安心した。

「いろいろわからないことも多いけどやっぱまずは情報がたりないな。」

俺はここに住んでる人なら知ってて当たり前のような質問を道行く人達にやっていった。

笑われたり、怪しまれたりしたもののなんとなく分かってきた。

まずここはウンディナムという大陸のパラシーという町で、大陸は全部で4つあり、他にイフリタス、シルフィリア、ノムレスがあるそうだ。

やはり聞いたこともない。

「情報収集はとりあえず最低限やったし、次は今日の寝食をなんとかしないとな。」

今はまだ朝か昼かってとこだが、夜になってしまうと俺には今日寝るとこもないので、まずは何より宿をとらないといけない。幸い宿屋はすぐに見つかった。外観は民宿みたいな感じの『福々亭』というとこだ。中に入るとすぐに

「いらっしゃいませ」

と、恰幅のいいおじさんが受付で俺に挨拶をしてきたので俺も「こんにちわ」と返して早速泊まれるか確認に入る

「今日宿泊しようと思うんですが、一泊いくらですか?」

「一泊でしたら、食事付きで100E(エレメンツ)、宿泊だけなら70Eです。」

「う〜ん、どうしようか…。」

俺のこの呟きは、こっちの金は一切持ってないし、ひやかしだと思われるのも嫌だしどうしようか…。という意味だったのだが、店主はいいように解釈したようで

「でしたらとりあえずご宿泊だけで一部屋お取りしておきますので、またお食事が要りようでしたら後でお申し付けください。」

と言ってくれたが、俺はそもそも金がないからひやかしだと思われるのが困るわけで、

「…そしたらとりあえず宿泊だけでお願いします。」

と答えるしかなかった…。

「ありがとうございます。そうしましたら、宿泊代70Eをお願いします。」

「え〜っと…」

俺は必死に頭を働かせた。金はこれから稼いでこようと思ってたので後払いだと勝手に思い込んでいた。

(どうする…本当のことを言って謝るか…?いや、そうするともう今後ここには泊まりに来るのが気まずくなってしまう…)

俺はテンパりながらも

「実は連れが金を全部持っていて俺は探してる途中で宿だけでも先に取っておかないと野宿になるんではないかと心配になって宿をとりに来たので、今は全く持ってないないんです。連れが見つかり次第お金は払いますんで部屋を取っておいてもらえませんか?」

と、なんとか誤魔化した。

店主は訝しげな顔をしながらも渋々納得という感じで了解してくれた。

「わかりました。それではお二人様ご宿泊でお取りしておきます。」

そうして俺は宿を出た



「さて、どうしようか…」

ただでさえお金がなくて困ってるところに、身から出た錆だが2人分の宿泊費と連れまで探さないといけなくなってしまった…。

「でもやっぱり最優先はお金だな…。」

連れも探さないとだが、それは最悪誤魔化せばなんとかなるだろう。

思案しながら歩いていると『ビッグボアの串焼き 1本10E』と書かれた屋台で大きな串焼きを売っているのが目に入る。

市場価格とか全く分からないが、あの串焼き1本10Eなら一泊飯付き100Eって良心的だなと思った。

「慣れてきたら相場とかも調べないとな…っと今は後の金より目先の金だな。」

俺は再びどうしようかと腰に手をあてたところで俺はずっとズボンのポケットに入れていたスマホに気がついて取り出した。当然ド○モの電波はこの世界になく、ずっと圏外の表示だ。こっちの世界ではこれはカメラと音楽くらいしか役にたたないので、なくても別に困らないだろう。元の世界に帰れる保証もないしな…。

それならと、俺は近くの行商人にこれを売り込んでみることにした。



「すいません」

「いらっしゃいませ。なにをお探しで」

「買い物じゃなくて、これを買い取って欲しいんですけど。」

そういってスマホを手渡す

「ほぅ、これは初めて見ますね…。」

店主は珍しそうにスマホを触ったり陽に透かそうとしたりしていた。

「お客さん、これはなんですか?私も初めて見るものでよくわからんのです。」

店主がお手上げだと言わんばかりの表情でスマホを渡してきた。そこで俺がボタンを押して画面をつけると店主が

「ほぅ、これはどの魔法で動いているんですか?」

と聞いてきたので

「魔法は一切使っていません。多分魔法を加えたら壊れます。」

と説明したら

「魔法なしで光を灯しているのですか!?これは一体どのような原理でうごいているのですか?」

と食い気味に店主が聞いてきたが、見た感じこの世界に電気とかはなさそうなので

「この装置(充電器)をここにつなげると陽の光を集めてそれで光るんです。」

と電気とかを濁しながら説明する

「僕も貰い物なんであまり原理とかはわかってないんですけどね。」

「なるほど…不思議なアイテムですね。このアイテムの名前はなんと言うんですか?」

「スマホと言います。」

「スマホですね、わかりました。これほどの珍しい物なら1000Eで買い取らせてもらいますよ」

「1000!?」

俺は思ってたよりも高くついたのでびっくりしていたが、そういえばまだカメラとか音楽とかの説明をしてないなと思って

「言い忘れてましたけど、ここをこうして…(パシャ)はい、これで映像の記録が出来ます。」

店主はカメラに写った自分を見てびっくりして

「これはすごい!」

と、とても喜んでいた

音楽の機能の説明をしたときも驚いたのは言わずもがな…。



「いやぁ〜本当にすごいですね、このスマホというアイテムは。これだけの機能を持っていてさらに魔力消費なしで陽の光だけで動くとは。これなら1000Eと言わず3000Eは出せますよ。」

「本当ですか!ありがとうございます。ではそのようにお願いします。」

「こちらこそありがとうございます。ではEをお渡しするのでエレメントクリスタル(Ec)をお願いします。」

「え…?」

「えっと、Ecですよ?もしかして持ってないのですか?」

「あはは、そうなんですよ。どっかで盗られたみたいで。それで路銀に困ってと言うわけで。」

「なるほど、そういった事情でしたら仕方ありません。それなら私のとこに在庫がありますのでそちらを1つ差し上げましょう。」

「え、そんな悪いですよ。」

「いえいえ私の感謝の気持ちですので、もしお返しをと思うのであればまたいずれこの私、『コダール』をどうぞご贔屓にお願いしますよ。」

そう言って店主のコダールは笑ってみせた。

「コダールさんは商売上手ですね。わかりました。このお礼はいずれまたなんらかの形で返しにきます。」

「ではこちらをどうぞ。中に3000E入れてありますので。」

「ありがとうございます。それではまた来ます。」

そう言って俺はコダールさんと別れた。



「宿代は手に入ったし、あとは連れだけど、そう簡単に見つからないよな…こんな素性もわからん男と急に同室に泊まるとか。俺が言われても怖いもんな…。」

俺は連れは諦めて暗くなってから宿に戻り1人で泊まる事にした。

だが、まだ昼なので早速帰るわけにもいかず、ぶらっと店を見て周り相場を調べる事にした。

「ついでに腹ごしらえだな。」

コンビニで買ったパンとかを食べても良かったが、さっき見たビッグボアの串焼きが気になって仕方がなかった。鼻孔をくすぐる香ばしい匂いにどれだけ唾液が出たか。

店の近くに行くと、列はそんなになく、すぐに買えそうだ。

ウキウキしながら並ぼうとしたその時

「うっせーな!やらねぇって言ってんだろ!邪魔だからどっか行け!」

「お願い、1つでいいから…お願いします。」

冒険者のような人にボロボロのローブのようなものを頭からかぶった女性が串焼きをせがんでいる。

とても乱暴な態度だが、冒険者には非がないだろう。実際に周りの人達もその女性に冷やかな目を送っている。

「お金は必ず払います!クエストさえ受ければどんな敵でも私の魔法で消してみせます!だから…」

「しつけーよ!こっちはもう魔術師は足りてんだよ!わかったら他に行け!」

だが俺はこの光景を見て、死にそうになってこんな世界にとばされてきたのにあの時の女の子を思い出していた。シチュエーションは全然違うのに…。俺は不思議と自然に項垂れている女性に近づいて

「付き合ってもらえませんか?」

「えっ?」

急に声をかけたから聞き取れなかったんだろうか?

「付き合ってもらえませんか?そうしたら串焼きくらい奢りますよ。」

「えっ、で、でも…そんな急に…。」

なんだかすごい赤くなってるけど大丈夫だろうか?

「考えておいてください。僕もお腹が空いてるのでまずいくつか買ってきますね。」

俺はそうして串焼きを10本ほど買ってさっきと同じとこに座り込んでいる女性に半分渡した。

「どうするか決まりました?」

「あっ、は、はい…。不束者ですが、よろしくお願いします。」

「?あぁ、よろしく。」

俺は堅苦しい挨拶だなと思いながらもこの人に魔法を教われば俺でも使えるかもしれないという期待に胸を膨らませていた。

「そしたら場所を変えようか、ここじゃあ、落ち着いて話も出来ないしね。」

「そ、そうですね。ではどこに行きましょうか。」

「それなら大丈夫。僕が宿をとってるからそこに行こう。」

「や、宿ですか!?そんないきなり…。」

「?なら宿は後で行くとしてまずはその辺でも歩きながらこれ食べようか」

相変わらずよくわからないリアクションだなと思いながら俺らは歩きながら串焼きを食べたが、話をしようとしても彼女は下を向いていて話ができなかったが、ちゃんと付いてきてくれていた。

そうこうしてる間に夕方になり、俺達は『福々亭』に帰ってきて、キッチリ2人分の宿泊代を支払い、せっかくなので飯付きにしてもらった。そうして俺達は案内された部屋に入った。

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