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第15話:ハスナー到着

遅くなってしまい申し訳ありません

積ん読を処理してました



ノムレスの地を歩きだして15分程した頃、俺達は初めての敵と遭遇した。

現れた敵は2体で、1体のハイウルフは野生の狼がモンスター化したもので牙と爪の攻撃が強力で強い個体は魔法を

使う。本来は群れで行動するが今回の奴ははぐれた個体のようだ。

もう1体はキラーアントで体長1メートル程の巨大な蟻で強力な顎と吐き出す強い酸が特徴の敵だ。

ノムレスで戦う敵のデータはここに来る道中コダールから詳しく聞いていて対処法も考えてある。

俺は冷静に行動を起こす。

「アスティは遠距離からキラーアントを撃って足止めを。コダールは後方待機。俺はハイウルフを仕留める。」

「はい。」「頼んだぜ。」

散開しそれぞれの行動に移る。

『フレアシュート!』

アスティの手から炎が勢いよく吹き出しキラーアントを襲う。

「ギギッ!」

キラーアントの苦しそうな呻き声を横に聞きながら俺は武器を展開しつつハイウルフに肉薄する。

『フォトンソード!』

振り上げたハイウルフの前足を展開した刀で一気に切り裂く。

いきなり前足を失ったハイウルフは戸惑いつつも立て直そうと少し後退するが俺はそれを許さない。

一気に距離を詰め直す。

「攻式弐ノ型『閃牙』」

突然の突きにハイウルフは反応できず、顔面からそれを受けて光となって消えた。

ハイウルフが消えたのを確認してからキラーアントと戦うアスティの方をみるとそちらも丁度アスティの魔法が炸裂し光となった所だった。

「おつかれ、アスティ。」

「ユーキもお疲れ様です。」

それぞれドロップアイテムを拾いながら思ったことを伝えていく。

「やっぱりパラシーの所のモンスターよりも強くなってるな。」

「はい。私も弱点を狙ったんですけど2発必要でした。それでもこれくらいならまだあまり緊張せずに戦えますね。」

「そうだな。とくに群れに囲まれたりしない限りはエンチャントも大丈夫そうだ。」

「いや~頼もしいね。この調子で町まで頼むぜご両人。」

「わかってる。ほら行くぞ。」

俺はコダールを急かして先を急いだ。


こうしてハスナーを目指し歩くこと1時間半程、間に何度か戦闘を挟みながらも俺達は無事ハスナーにたどり着いた。

「ふ~。やっと着いたぜ。お前らご苦労さん。」

「おう。俺達はこれからしばらく厄介になる宿を探しに行って、それからギルドに顔を出そうと思ってるんだがお前はどうするんだ?」

「俺は宿はこいつがあるから問題ないからな。まずはここらの知り合いに挨拶をしてからまた人の集まる所で商売しとくわ。多分その辺の広場とかにいると思うからまたなんかあったらいつでも言ってくれ。」

コダールが今まで乗ってきた行商用の車を叩いて言う。

「そうなんですか。それじゃあここで一端お別れですね。」

「でもまあ同じ街にいるんだからすぐに会えるだろ。」

「そゆこと。それじゃあお二人さん、邪魔物はここいらで退散するんであとはゆっくりお二人で過ごして下さいな。」

「おいコダール!」

「ははは!じゃあな~。」

コダールは俺達を茶化して去っていった。

「全く…。それじゃあ俺達も行こうかアスティ。」

「あはは。はい行きましょう。」

俺達は人の多そうな辺りを目指してまずは歩き出した。


街の道具屋のおばちゃんとかに話を聞きながら歩くこと数分、俺達は目的の宿を見つけた。中に入ると

「いらっしゃいませ。『石竜亭(せきりゅうてい)』へようこそおいでくださいました。」

女将さんと思われる少し歳をとった女性が俺達を出迎えてくれた。

「本日はどのようなご用で?」

「あぁ、飯付きで宿を取りたいんだが。」

「部屋数は2部屋でよろしかったですか?」

俺はアスティの方を向いてアスティの意思を確認する。

アスティは俺の意図を汲み取ると縦に首を振った。

「いえ、部屋は1部屋で大丈夫です。」

「それでしたら1泊150Eです。因みに食事無しなら100Eです。」

「それじゃあ取り敢えず食事付き3泊でお願いします。」

「ありがとうございます。それでは3泊で450Eになります。」

俺はEcを差し出し450Eを支払った。

「それではお部屋の方にご案内させていただきます。」

そういって俺達の前を歩いて案内してくれた。

「こちらをお使いください。」

案内されたのは2階の階段を上ってすぐ隣の部屋だった。

女将さんは俺達を案内するとすぐにまた下に戻っていった。

なんだか女将さんの目元と口元が少し笑っていたのが気になったが俺達は部屋の中に入った。

「おぉ。」

「結構広いですね。」

その部屋は前のパラシーで泊まっていた宿の部屋よりも1.5倍くらい広かった。

俺達は早速余分な荷物を置いてギルドに向かおうとしたのだが問題が1つあった。

「ベッドが大きいな…。」

「そ、そうですね…。」

「でもなんで1つしかないんだ?」

この部屋はベッドの他は文句なしに良いが、そこだけ女将さんの悪意というか善意というかありがた迷惑があった。

「ちょっと部屋を変えてもらうように頼んでくるよ。」

俺は女将さんを追いかける為振り返ると右の袖に小さな抵抗を感じた。

「アスティ?」

「あ、いえ、すいません。ただ私は別にこのままでもいいかなって。」

「えっ?」

急に積極的になったアスティにびっくりしていると

「あ!いえ、変な意味とかではなくてですね?ユーキと一緒に寝るのは安心して寝れるかなって思って…。」

アスティに他意はない。アスティはただ安心して寝れそうだからって言ってるだけだ。

俺はもう一度アスティを見るとこちらを真っ直ぐに見つめ『だめですか?』と訴えかけているように見えた。

「…分かった。このままこの部屋に泊まろう。幸い他の家具類は良い品だしな。」

「はい。」

アスティは心なしか嬉しそうだった。

思春期真っ只中の俺には多少刺激が強いが…。

「暫くは寝苦しい夜が続きそうだな…。」

俺はアスティに聞こえないように小声で呟いた。


俺達は宿の部屋にいらない荷物を置いて少しだけ休憩してからギルドに行くことにした。

宿の場所と一緒にギルドの場所も聞き込みしていたから大体の場所は把握している。

「たしかギルドの場所はここから街の入口に少し戻って、途中にある交差点の角の武具屋を曲がって少し行ったとこでしたっけ?」

「たしかそうだ。まぁ、分からなくなったら何度でもその辺の人に聞くさ。」

俺達は少し見切り発車で宿を出発したが、ギルドは情報通りの場所にあり、一切迷うことなくたどり着いた。

俺達は早速ギルドに入ると中はパラシーで見てきた冒険者と違って、強そうな武具を身に纏った冒険者で溢れていた。

「やっぱりランクが高いだけあって皆武具が強そうだな。」

「そうですね。なんだかこの格好だと場違いみたいです…。またEが貯まってきたら新調しましょうか。」

「そうだな。でもまあそれもしばらく先だな。先ずは宿代と食費の確保だ。」

俺達はコダールの護衛クエストの達成報告と関所を通ってから街に着くまでに倒したモンスターのドロップアイテムの換金の為、受付の列の最後尾に並んだ。

最後尾とはいえ回転率は高く、10分程で俺達の順番になった。

「いらっしゃいませ。初めて見る方ですね。今日はどういったご用件で?」

「パラシーからこの街までの護衛のクエストの完了報告に来ました。あとはその道中のモンスターのドロップアイテムの換金をお願いします。」

「分かりました。それではお2人の冒険者カードを提出してください。」

俺達は言われた通り冒険者カードを受付のお姉さんに渡した。」

「………はい。一ノ瀬悠希さんとアスタリア・エアロさんですね。確かにコダールさんからの護衛クエストの完了を確認しました。次に討伐報酬の確認を行いますので、モンスターのドロップアイテムを提出してください。」

俺は道中のハイウルフとキラーアントから手に入れたドロップアイテムの内、ハイウルフの肉以外のものを全て提出した。

ハイウルフの肉はアスティが明日の弁当に使ってみたいと言ったからだ。

「ハイウルフの牙が4本、爪が2本、キラーアントの顎が2つ、蟻酸袋が1つですね。これだと…しめて4200Eですね。」

「それでお願いします。」

俺はEcをお姉さんに渡した。

「…はい。それではお返し致しますね。」

「ありがとうございました。」

「またよろしくお願いします。」

俺達は本日の目的を全て果たしギルドを跡にした。


ギルドを出た後はアスティが明日の弁当の材料を買いに行きたいと言ったので2人で店を見て回ることにした。

「やっぱりこっちの土地になると向こうとはまた違った品揃えになるんだな。」

パラシーにいた頃によく食べていたビッグボアの肉はハスナーでは置いてないらしく、代わりに俺達も持ってるハイウルフの肉が売られていた。

野菜とかも見てみたが、らっきょうやサボテンのように砂地で栽培できるものが豊富にあった。

逆を言えばアスティの好きな甘露の実といった森の食材などは売ってなくて、それが分かったときは少し残念そうだった。

しかしこの地の食材にも甘露の実とは別の良さがある。

さっきも言ったサボテンだが、この地のものはウォーターサボテンといい、その葉は水分を多く含み、水の少ないこの地の貴重な水源となり、その実は水分と甘味を多く含み、桃のような食べ物となる便利な植物だそうだ。

アスティもサボテンの実を気に入ったようで目をキラキラと輝かせている。

「よかったな。こっちにも美味しいデザートがあって。」

「本当ですよ。甘露の実に負けず劣らずこのサボテンの実もすっごく美味しいです!」

俺達はサボテンの葉と実をある程度購入して店を出た。

「これでデザートは安心です。ユーキも何か食べたい物とかありますか?」

「うーん、俺も前から探してるものがあるんだが……おっ?」

俺は少し先の店で目当ての食材を見つけた。

「おじさん、これは?」

「これはデザートフィッシュだ。街の北側のエリアに出てくるモンスターだな。」

そう、俺が探していたのは魚だ。

パラシーからここまでもてに入るのは肉ばかりでそろそろ魚が恋しくなっていた所だった。

「魚ですか、確かに最近はお肉ばっかりでしたもんね。」

「アスティは魚料理とかも出来る?」

「はい、大丈夫ですよ。」

「それなら、おじさん。このデザートフィッシュ1匹お願い。」

「あいよ。まいどあり。」


俺達はその後も数件店を回り調味料などを買い揃えた後で宿に戻ってきた。

帰ってくるとアスティは女将に朝の弁当の件で厨房の使用許可をとりに行ったので俺は先に部屋に戻ってくつろぐことにした。

「アスティや宿のご飯に文句がある訳じゃないけど肉続きだったからな…魚が手に入ったのは行幸だな。」

俺はベッドに腰を掛けてひとりごちる。

明日の弁当にはどんな料理が並ぶのだろうか。今から考えるのが楽しかった。


俺がしばらく考えているとアスティが帰ってきた。

「無事お弁当の許可もらえましたよ。でもなんだか女将さんがずっとニコニコしてたんですがなんだったんでしょう?」

アスティは首を傾げながらうーんと考えていた。

あの女将さんには気をつけねばと再確認した俺だった。


その後運ばれてきた夕食をさっと食べ、交互に風呂に入り、今日は歩き疲れたから早く寝ようということになった。

俺は布団に潜るとアスティがおずおずと同じ布団に潜ってくる。

(忘れてた…!そういえば布団1つしかないんだった!)

「ごめんアスティ。」

俺は布団の端の方に体をずらした。

「あっ、いえ、すいません。」

アスティもなぜか謝りながら体を寄せてきた。

この布団はサイズ的にも2人が寝たら体が密着するほどの幅しかない。

(くっ…!女将め余計なことを…!)

アスティと体を密着させて寝るに寝れない状況でアスティの方をチラッと見てみるとアスティも顔を赤くして何か考えていた。

何度かそうしているとやがてアスティが決意した顔になり

「えいっ。」

「わっ!」

急に俺に抱きついてきた。

「ど、どうしたアスティ?」

「きょ、今日だけこうしてちゃダメですか?ユーキとこんな風にくっついていられる事なんてそうないですし。」

いつもより少し早口で説明してくるアスティ。

なにより好きな子にそんな事を言われてダメだと言える男がいるのか?

「わ、わかった。」

こう答えるのが限界だった。

「ありがとうございます!」

そう言うやいなや俺の腕に顔を埋めてえへへっと笑みを浮かべている。


しばらくすると安心したのか寝息が聞こえてきた。

試しに腕を抜こうとしてみたがその腕はしっかりと握られていて離れそうにない。

「今日は簡単には寝られそうにないな…。」

俺は次の日の寝不足を確信してなんとか寝るように努力した。

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