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第14話:ノムレス



門をくぐりフィールドを移動する俺達だが、出てくる敵はやはりゴブリン等で俺達にとってたいした障害にならない。

だから俺達は行き先のノムレスについての情報をコダールに確認しながら道を進んだ。

「俺達が向かってるノムレスに行くには関所みたいな所を通るのか?」

「おう、その通りだ。通行料を払わないといけないがそこにはギルドの換金所もあるから道中に倒したモンスターのドロップアイテムを換金したりすればたいした額じゃない。」

「それは助かる。最近武器を新調したとこだから出費は抑えたかったんだ。」

「その武器ってその刀身のない刀の事か?」

「そうだ。そう言えばお前には詳しく説明してなかったな。」

「初め見たときはびっくりしたからな。」

俺は魔法でこの剣に刀身を作りそれで戦った方がメリットが多くて強い事をコダールに説明した。

「なるほどな、となるとそれは他の奴らにはあんまし言わない方がいいな。」

「そうしてくれると助かる。」

「貸し1だからな。」

「またなんかあったら言ってくれ。」

お互い軽口を言い合って話を元に戻す。


「それで俺達はノムレスのなんて言う所に向かってるんだ?」

「俺達が向かってるのはノムレスのハスナーって街だ。パラシーよりはちと狭いが金属加工の技術力はパラシーよりも上だ。それに出てくる料理や建物なんかもパラシーとは違うな。まぁこれは着いてのお楽しみってことで。」

「楽しみにしとくよ。」

「それじゃあご飯のメニューも新しく考えないと駄目ですね。」

「アスティの新しい料理か、それは楽しみだ…」

「なに!?おいユーキ、お前アスタリアさんの手料理を食ってんのか?」

「お、おう。アスティに弁当作ってもらったりしてるが…。」

コダールが食いぎみに質問してきた勢いに気圧されて若干引きぎみに答えると

「しかもお弁当だと…!お前らもう結婚でもしてんのか?」

「「け、結婚!?」」

「一緒の部屋に住んで、彼女の手料理を食べて、昼は弁当を食べて、夜はベッドで絡み合う。例え結婚してなかったとしてももう秒読みだろ。」

「け、けけ結婚…。ユーキと私が結婚。ベッドで絡み合う…ボッ!」

アスティがコダールの言葉を復唱して真っ赤に茹であがった。

「お、おいコダール。やめろよ。アスティが真っ赤になってるじゃないか!それに俺達はまだそんな結婚なんて考えてないんだ。」

「なんだよ。お前アスタリアさんと結婚する気はないのかよ?」

「俺だって将来的には考えてる!でも俺はまだ歳も16だし、貯金もそんなになくて収入も安定してない。それに…まだアスティのご両親に挨拶してないからな。」

俺だって将来的にはそうなればいいなとは思ってるし、アスティよりいい人はいないと思ってる。

「はぁ~アホくさ。」

「なっ!」

コダールは俺の意見をその一言で一蹴した。

「いいかよく聞け?結婚に歳なんか関係ねぇ。16どころか場所によっちゃあ10歳で結婚とかもあるんだよ。貯金なんて冒険者でそんだけの強さがありゃこれからすぐに貯まるだろ?そんで冒険者やってんだから収入の安定とかあるわけねぇ。それに両親に挨拶もなにもアスタリアさんは家出してきたんだろ?そんなの行く必要がねえよ。それに、お前のさっきの発言の方がアスタリアさんを真っ赤にさせてるぜ?」

俺がアスティの方を振り返ると顔を押さえて丸くなっていた。

「アスティ!?ごめん。俺は別に…。」

「い、いえ、私嬉しくて。ユーキがそこまで考えてくれてるなんて…。私もけ、結婚するならユーキとがいいと思ってますし、その…は、初めての相手もユーキだったらこ、怖くないかなって…や、やっぱり今のは無しです!忘れてください!」

「アスティ…は、初めてのって…。」

「あうあう…。わ、忘れてください…。」

「いいや忘れない。そして、いつか結婚したらそれも叶えよう。」

「ゆ、ユーキそれって…。」

「あ、ああ。一応プロポーズのつもりだ。その…変だったか?」

「いえ、ありがとうございます。いつかお願いしますね?」

「ああ。」

そこで俺達はゆっくりと互いの顔を近づけていき

「ゥオッホン!あ~あ~。一応俺もいるんですがね~。まぁ若いお2人さんと一緒に旅って時点でこういう雰囲気になるのはわかってたんだけどな。まぁ俺はしっかりと護衛の任務さえやってくれれば?べっつに何してくれてもいいんですがね?あ~アホくさ。関所の近くになったら起こしてくれる?俺はなんか急に眠たくなったから。」

そう言ってコダールは荷台の奥に入っていった。

残された俺達は急に恥ずかしくなりお互い背中合わせで距離を開けた。

「こ、コダールがいたの忘れてたな。」

「あ、あはは。そうですね。」

それからは何事もなく(ゴブリンとかとの戦闘はあったが)関所まで着いた。



「正面のギルドの受付っぽいのが関所で、あっちの冒険者っぽい人らが並んでるのが換金所兼道具屋で、その向こうには宿屋がある。まあ宿屋とは言っても狭い部屋にベッドがあるだけで飯と風呂はないから野宿よりは少しだけマシってぐらいだからオススメはしないがな。」

言われてた通り関所が近づいてきてコダールを呼ぶと関所について簡単に説明してもらった。

俺達はまず換金して通行料の足しを作らないといけない為、冒険者の列に並んだ。

コダールは商売の為列から少し離れて客を集めていた。

関所なだけあってかパラシーの街では見なかった種族も見受けられた。

「あの人はドワーフで、あっちの人は魔人族かな?あ、あの垂れた耳とフサッとした尻尾は犬人族でいいのかな?」

「あれは犬人族(ドッグピープル)ですね。ノムレスでは犬人族と猫人族(キャットピープル)が特に多いんです。あとは狼人族(ウェアウルフ)とか狐人族(フォクシー)なんかがいますね。」

アスティから獣人族の説明を受けているとまた特徴的な種族を見つけた。

「あ、あれはエルフじゃないか?アスティの知り合いとかじゃ…。」

そこまで言った時アスティが俺の後ろに隠れるように身を潜めた。

「どうしたんだアスティ?」

「い、いえ。私はエルフの里を飛び出して来てるのであんまり同族に見つかるのは良くないんです。」

そうだった。アスティは勝手に出てきているからバレたら連れ帰られたりもあるかもしれないのか。

「ごめん。大陸の移動はこういうこともありえたのに軽率だったな。」

「いえ、いずれはあったことですし注意して行動すれば大丈夫ですよ。念の為にフードも被ってますし。」

そんなやり取りをしていると俺達の順番がまわってきた。

俺は道中で集めたドロップアイテムを全て渡してEに変えてもらった。

これで俺達のEは8000Eくらいは貯まった。

関所を通過するのに1人いくらかかるかわからないから不安はあるが…。

「それじゃあコダールを呼んで関所に行こうか。」

俺達がコダールの所に行くと店はボチボチ繁盛していたようでコダールが売り上げの計算をしているとこだった。

「どうだった?儲かったか?」

「おう、ボチボチだな。そっちはどうだ?と言ってもたかがゴブリンの素材じゃあ大して儲からねぇか。」

「まぁ少しは足しになったってとこかな。いくらぐらいかかるのかわからないがな。」

「それは俺も知らねえよ。それじゃあとっとと関所に向かいますか。」

俺達は3人で関所を通過する為にその列に並んだ。



幸いその列は短くまた1人にかかる時間もそんなに長くなかった為、俺達の順番はすぐにやってきた。

「いらっしゃいませ。まずはそれぞれ身分証明出来るものををご提出下さい。」

コダールは商人の登録証、アスティが冒険者カードを提出したので俺もそれにならった。

「ではヒューマンが2名、エルフが1名でよろしいですか?」

「ああ、大丈夫だ。」

コダールが受付に答える。

「了解しました。それでは通行料としてヒューマンの方は1000E、エルフの方は800Eをお支払ください。」

「種族によって通行料が変わるのか?」

俺は思った疑問をそのまま口にした。

「はい、行き先の種族の方との関係性によって通行料の前後があります。基本的には通行料として1000E頂いてますが、昔から今までの友好関係などを加味してそこから増減があります。」

「なるほど、それじゃあエルフ族と獣人族は仲が良いのか。」

「はい、そうなります。」

「わかりました。ありがとうございます。」

「いえ、それではEcを掲げてください。………はい、それぞれ頂戴致しました。それではこの先の通路をお進み下さい。良い旅路を。」

俺達は指示されたようにその先にある扉から先に進んだ。


扉の先は幅の広い一本道で、少し進んだ先にもう1つ扉が見える。

「あの扉をくぐったらノムレスだ。」

「あの先に…。」

俺は歩きながら少し考えていた。

あの扉をくぐればその先には違う種族、違う文化があり、そこには自分が今まで出会ったことのない種族が住んでいる。

そう考えると一気に楽しみが増してきた。

「旅って面白いな。今までずっとウンデナムにいて色んな人を見てきたけどあの先にはそれとはまた違うものがある。それを自分の足で見に行って知ることが出来る。それは前の世界では経験出来なかったことですごく楽しいな。」

俺はついそれを口に出していた。

「ははっ、なんだよおい。お前がそんなだとこっちが調子狂うぜ。」

「ふふっ。ユーキもそんな風に思い(ふけ)ることがあるんですね。」

「な、なんだよ。別にいいだろたまには。」

俺は無意識の発言を拾われて恥ずかしかったが事実であり、心からの声なので否定はしない。

「ほ、ほらもうすぐ扉だ。早く行こう。」

「なんだよそんな急かすなって。もうちょっと思い耽ってろよ。ニシシ」

「そうですよ。ユーキのこんな顔滅多に見れそうもないですしゆっくり行きましょう。」

「もうお前らの前では絶対にやらねえよ。ほら、さっさと行くぞ。」

人の悪い笑みを浮かべるコダールとアスティを振り切って俺は扉に手をかけてゆっくりと開いていく。

扉の先には今まで歩いていた草原のフィールドとは違って高野のようなフィールドが広がっていた。

俺は2人を待ってからノムレスの地に第一歩を踏み出した。

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