プロローグ~現実世界編~
プロローグで設定を詰めすぎて2部構成になってしまいました。初めてですので読みにくいかと思いますが、3話目からはしっかりと異世界やっていきますので温かく見守ってください。
「一本!それまで!勝者、一ノ瀬悠希!」
父さんが師範をしていた気新流剣術で高校の剣術大会決勝に勝利した俺を審判が呼んだ。
周囲から拍手と歓声が響く中、俺は3年前に事故で死んだ師範の父さんにやっと一歩追いついた気がして、目に涙を浮かべていた。
現在俺は気新流剣術3段だが、父さんは最高段位の7段だった。
昔から父さんは「俺を越えていけ。悠希には才能がある。」と言っていた。父さんは気難しく、普段も父さんの部屋に飾ってある7段を取得した際にもらった真剣の手入れと剣術の稽古くらいしか関心がなく、俺とも稽古の話がほとんどだった。だから俺は昔から剣術でのみ父さんとの繋がりを感じ、そして師範として父さんの強さを尊敬していた。そんな父さんに早く追いつきたい。もっと認めて欲しいと思い、俺は頑張った。
しかし父さんは俺が中学に入り、初めの夏休み前、剣術と母さんを残して死んだ。仕事帰りの事故だった。
目標を失い荒れた俺に母さんは「その剣術は父さんの形見なんだから、もっと練習して父さんを越えて大きくなりなさい。」と優しく接してくれた。
自分も辛いだろうに俺にはそんなそぶりも見せずに…。
俺は母さんの優しさに報いる為に、父さんとの繋がりを手放さない為により一層剣術に励んだ。
そして今高校の全国大会に優勝した。次の目標は段位をあげ、師範代の資格を得る。そうして一歩一歩父さんに近づいていく。それは嬉しくもあり、楽しかった。
翌日からも修練に励み、たまの息抜きには友達と遊んだり、ゲームをしたりしていた。父さんに胸を張って報告出来るように
事件は大会の3日後に起きた…。
いつものように学校を終え、剣術道場で汗を流し、同じ門下生と他愛ない雑談を交わしての帰り。皆と別れ家に着くと玄関が少し開いていた。俺は無用心だなと思いつつも入ると奥がいつもより騒がしかった。リビングの方だろうか?「母さんただいま。誰か来てるの?」そう言ってドアを開けると肩から袈裟懸けに切られた母さんが倒れていて、切った犯人が父さんの真剣を持って窓から逃げるとこだった。