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叡智と芸術のはるかな尻尾の先へ
わたしはバイオリンが弾けないけれど
その美しい旋律が胸の中で響くとき
鈍く疼く冷たい鉄の扉を感じる
扉の中で何かが身じろぎしている
胸の詰まるようなこの思いを
刺すような痛みとともに
旋律は呼び覚ます
頭の中では軽やかな音譜の流れが踊り
耳からは透明な拍手が響く
脳裏に描かれるのは
白いふっくらとした面影
たおやかな腕は弓をひき
ときに機敏に
ときにゆっくりと
奇跡の音色を奏でる
その音色は決して扉を開けることはない
静かに外側から働きかける
扉の奥まで響く慎重に選ばれた音は
奥で身じろぐ眠れないものを眠らせて
鍵穴から忍び込む哀切漂う旋律は
血を流し猛るものを静まらせる
ふゆの澄み切った空気を震わせて
幽閉された窓の中にも
輝ける響きは届く
病気のこころたちよ
嘘に傷ついたこころたちよ
己のアバラを内側よりばきばきと開くことしか知らぬ
愚かな私よ
先人たちの
叡智と芸術のはるかな尻尾の先へ
連なることが出来たなら
生きるとは厳かな光のあるものだと
感じることが出来るだろう




