表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/48

13

 これは、どう表現すればよいのやら。



「うふふ〜」


「うふふ〜、じゃねぇよ。身体繋ぐのにどんだけ苦労したかわかってんのか?あ?」


「この度は誠にありがとうございましたぁ。痕も残さないでくださって本当、感謝してますぅ」


「んっとに癪にさわるなぁ、おい」


「さっきから、言葉遣いがわ・る・い・ぞっ!」


「は?」


「その反応!あたくし痛い子じゃない!」


「悪りぃな。俺には治せねーわ」


「ひっどーい!」



 目の前で繰り広げられる応酬をぽかんとして聞いていたら、側にジルダが寄ってきた。



「アンさん、口開くと残念だろ」



 残念……、残念というか、なんというか……。



「ねえ?何か言った?」



 ガギャン、と不快な音がした。

 にこやかに微笑むアン様が持つフォーク。それに刺さったリンゴーーと割れたお皿。



「何も!何も言ってないっす!!強いて言えばアンさんが美人だってらことぐらいっす!」


「ジルダ?リンゴになりたい?お皿になりたい?」


「ヒッ」



 震えはじめたジルダを無視したアン様が、ぱっとこちらに視線を向けられた。

 そのキラキラ輝くアイスブルーにじっと見つめられると、ドギマギしてしまって思わず目を彷徨わせてしまう。

 とても失礼な行動を取ってる自覚はあります。でも、あまりに綺麗で直視なんてできません。



「あなたどなた?」



 あぁ、そういえば自己紹介がまだでした。

 頑張って視線を戻して息を吸う。



「私はーー」


「アン、いい加減に何があったか話せ」



 あっ。

 自己紹介も大切だけど、それよりも、マドラル隊長はずっとアン様のことを心配なさっていた。そちらを聞く方が最優先だわ!私ったらなんて気がきかないのかしーー、


 ガスッ


 と、音がした。

 その前に、何かが鋭く飛んで行ったのを視界の端で捉えていた。

 恐る恐る振り返れば、真っ白な壁とそこに深々と刺さったフォークが。

 そして、無表情のマドラル隊長。



「……おい」


 みは、はい!?」


「早く名乗れ」


「あ、はい!えっと、ルイーズ・ド・カナートと申します。陸軍から配属され、現在マドラル隊長の下で秘書官をやらせていただいております!」



 慌てて向き直って言い切れば、アン様が微妙な表情をなさった。

 え?なに、かしら。



「……陸軍?ということは、」


「ギル・ド・ロッド」


「うわぁ……」



 ロッド少将?あの、なぜそんなにもお嫌そうな表情をなさるのかしら?



「あたくしもう関わらないと決めたの」


「もう遅い」


「いやよぉぉぉ」



 両手で顔を覆い泣きはじめてしまったアン様に、どうしていいかわからずおろおろするしかない私。



「アン。カナートが戸惑っている」


「ごめんなさいね、気にしないでちょうだい」



 さっと手を外したアン様の瞳は完全に乾いていた……。



「改めて、これから仲良くしましょうね。あたくしのことはアンとお呼びなさいな」


「はい」



 めまぐるしく変わる方だけれど、とてもいい人そう。それに、お元気そうでよかった。

 マドラル隊長のお声も、どこか安心なさっているような響きが混じっている。

 和やかな雰囲気は私が感じた空軍隊そのものだった。



「……それで。誰にやられた」



 けれど、マドラル隊長のその言葉に、今までの空気がぴきんと張り詰めた。



「……まず、《北の森》に近づいては駄目よ」



 えっ。《北の森》?

 それって、今ラファージュ副隊長が行っている場所、よね?近づいてはいけないって……。



「どういうことだ」


「あたくしはねーー、」


「隊長!魔人です!」



 アン様のお言葉を遮りバターンッと激しい音を立てて扉があけられた。そしてそこには、肩で息をしたオーギュスタが血相を変えて立っていた。



「魔人にやられたのよ」



 静かに続けられたアン様の言葉に、重苦しい沈黙が落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ