光速を求める敵:武器商と少女
二日ほど休眠状態だった彩夏が、ようやく目覚めた。
とりあえず腹が減った、ということで、持ってきた戦闘用食糧を口の中に放り込み、水で流し込む。
タッチパネル式の携帯端末を取り出し、電源を入れる。電池は体内で発生した余剰な電力を再利用している。
こうして生活してみると、人間だった頃と大差ないように思える。
ただ、住んでいる場所の治安に差があるだけで。
「動くな!食いもん寄越せ!」
ドン!という音と共に、扉が蹴破られ、銃を持った敵がずかずかと入ってくる。銃は一昔前の、火薬式のライフルだ。この辺りでは、未だに火薬式のハンドガンやライフルが流通している。普通の機人なら、これでも十分倒せるからだ。
だが、彩夏は違う。
敵が引き金を引く瞬間、彩夏は内ポケットに入れていたレーザーハンドガンを抜き、撃った。
光の速さで飛翔したレーザーが敵の眉間を射抜き、音もなくその敵は倒れた。
「おい、何事だ」
隣人に住む厳つい男が、ガス式の対機人ショットガンを持ち、小屋に入ってきた。
「あ、姉御。戻ってたんですか」
「私は姉御じゃない。綾女って呼んで」
綾女、というのが、彩夏の偽名だった。
「分かりました綾女さん。こいつは軍に処理してもらうので、持っていきますね」
「助かる」
「いいですって、こっちも色々助けられてますから」
笑顔で機人の死体を持ち上げた男は、そのまま外へ出ていって、出入り口前で止まった。
「姉御、この後ドアの修理しておきますよ!」
「だから姉御じゃないって」
溜息を吐いた彩夏だったが、少し気持ちが楽になった。
◆◇◆◇◆
扉を直してもらっている間に、彩夏は武器商がいる小屋に行った。
「誰だ」
「私よ」
「おぉ。これは珍しいお客さんだ。そこの椅子に座ってくださいな」
これまた厳つい、しかし、声に少し丸みを帯びたような印象の男が、武器商だった。
武器は基本的に、軍が製造し、軍の中でしか使われていない。
しかし第四次世界大戦終結後、様々な武器が流出し、本来持つ必要のない機人たちまでもが武装し始め、殺し合いを始めた。
カウンターの前にある椅子に座った彩夏を見て、武器商は話しかけた。
「今日はどんな武器をお探しで?」
「八七式の特殊加工弾一式と、レーザーライフル一挺。それと対物ハンドガン、パルスグレネード十個。ライフルとハンドガンは弾がそれぞれマガジン二十個分」
「随分多いですな。パルスグレネードと対物ハンドガンなら在庫があります。レーザーライフルは明日までに調達可能ですが、八七式の特殊加工弾に関しましては、炸裂式貫通弾が十発、閃光焼夷弾が二十発、超長距離狙撃用徹甲弾が五発のみとなります。それ以外は現在調達できません」
「分かった、それでいい。対物ハンドガンとパルスグレネードは今持って帰る」
「承知しました。少々お待ちを」
武器商の男は、部屋の奥に入っていった。
数分して、白いケースを二つ持ってきた武器商が戻ってきた。
「こちらが、M七四対物ハンドガンでございます。重量八キロ、装弾数は三発。火薬式で、弾薬は十二ミリ弾を使用。予備のマガジンはこちらに入っております」
そして、カウンターの下から、よっこらせと取り出したのは、少し大きめの木箱だった。
「こちらは、極東軍標準装備のパルスグレネードでございます」
木箱の中には、青い塗装が施されている缶のようなものが十個並んでいた。
「よし。代金は明日払えばいいな?」
「普段ならこの場で払うように言っているのですが、今回は特別に、明日まで待ちましょう」
「恩に着る」
ケースを二つ、木箱の上に乗せると、その木箱を持ち上げ、武器商のいる小屋を後にした。




