光速を求める敵:隠密戦
「敵がいる」
彩夏は小屋の近くでそう告げられた。
「事情は後で話す。まずは敵を片付ける」
「……分かった」
ロバートはにやりと笑うと、腰からレーザーハンドガンを抜いた。
「イリヤと彩夏は回り込んで攻撃。俺はここで足止めする。クロサ、あんたは周囲一帯に被害が出ないよう、喰い止めろ」
「喰い止める?」
「その話もしたいが、後だ。今は任務に集中だ」
「了解」
彩夏は切り替える。
《M94速射型レーザーライフルとリンク》
《照準補助システム:起動》
《周囲索敵網にアクセス》
《敵数:25》
レーザーライフルを構えた彩夏は、地面を蹴り、凄まじい速度で、しかし音を立てないようにして走り去っていく。
◆◇◆◇◆
《敵を視認》
《戦闘開始》
彩夏は視界の中央にある十字に敵が重なった瞬間、引き金を引いた。
音もなく飛んでいく光の弾丸は、敵である機人を確実に貫き、死に至らす。
五体ほど倒したところで、イリヤが交戦開始。その場はたちまち戦場と化した。
◆◇◆◇◆
三分後、あっけなく戦闘が終わった。
「弱かったわね」
「そうだね」
死んだと思っていた戦友が生きていた。だが彩夏は喜ばなかった。
イリヤは彩夏が感情に乏しいことを知っているため、そこをとやかく言うつもりは無かった。
「終わったみたいだな」
ロバートがやってきた。その後ろには、戦闘服姿のクロサの姿があった。
「戦闘終了。大した被害はなかったみたいですね」
「そうだなクロサ。ご苦労」
「……そういえば、クロサさんは何をしたんですか?」
彩夏の質問に、クロサは苦笑いを浮かべた。
「それは後で話しますよ、姉御。あとクロサさんっていうのはちょっと慣れない。クロサって呼んでください」
「分かったわ、クロサ。だけど姉御って言うのももうやめて。ここまで来たら、上下関係はなしでしょ」
「……彩夏って呼んでいいか?」
「はい」
「さて、慣れ合ってるところ済まないが、そろそろ俺たちの拠点に戻らないとまずい。とりあえず彩夏の小屋に行って武器を回収しよう」
「了解」
ロバートに敬礼をしたクロサを見た彩夏は、得体の知れない安心感に包まれたような気がした。