光速を求める敵:最強の協力者たち
一週間が過ぎた。
彩夏はパーカーを着ると、レーザーライフルを持って外に出た。
風が強く吹き付け、彩夏の黒髪が靡いている。
そう言えば、他の仲間はどうなったんだろう。
ふと思い出すと、彩夏は思考による操作でネットワークへの接続を試みた。
《Nemesis Network》
《エラー:存在しません》
「ダメか」
やはり現実だったんだな、という虚無感がどこからともなくやってきたが、それを振り払うと、彩夏は夜中の寂れた街を歩き始めた。
◆◇◆◇◆
数分ほど歩いていると、軍の基地が見えてきた。
「姉御、散歩ですか?」
後ろから声をかけられる。隣に住む男だ。
「姉御って言わないでよ。……それにしても、穏やかじゃないわね」
「そりゃ当然ですよ。紅咲彩夏」
振り返り、レーザーライフルを構える。
「動くな」
男はレーザーハンドガンを構えていた。
「そういえば、名乗るのを忘れてたな。俺は極東軍第二十八師団にある戦略級機人部隊のクロサという者だ」
「第二十八師団、戦略級?嘘も大概にしろ!」
「嘘じゃない。お前たちが所属していた第二十一師団の対機人特殊暗殺部隊と同じで、非公開の部隊だ」
クロサと名乗った男は、銃を下げた。
「どういうつもり?」
「勘違いするな。俺はお前と敵対するつもりはない。むしろ、協力者だ」
「信用できない」
「そうだな。確かに信用出来ないな。では、これならどうだ?」
クロサが手を挙げる。彩夏はレーザーライフルの引き金に指を掛けた。
「撃たないで、彩夏」
暗闇から、黒いフードを被った男と女が出てきた。
「……紹介するまでもないな。第二十一師団、元Nemesisのロバート、そしてイリヤだ」
「ロバートと、イリヤ……」
彩夏は、レーザーライフルを落とした。そして、その場で跪いた。
「色々話したいことがあるが、時間がない。とにかく、お前の拠点に戻るぞ」
ロバートは、泣きそうになっていた彩夏の手を取って立ち上がらせた。